抄録 |
地方における医師不足が社会問題となり、その対策として、大学医学部における地域枠や、奨学金制度による医師確保対策が各地でとられる中、将来地方で勤務する医師にとっては、専門領域における育成が不安要素となることが少なからず認められる。長崎県では離島医療確保のため、昭和47年の自治医科大学派遣制度に先駆けて、昭和45年より県独自の医学修学資金貸与制度設けて医師確保を行ってきた。この制度は自治医大制度と同じく、一定期間の義務年限を設けて離島勤務を課すものであり、これまで自治医大制度と合わせ142名の医師を輩出し、現在も50名が離島・へき地で勤務している。それと同時に離島の医療機関の整備にも着手し、医療レベルの向上にも努め、住民の期待にこたえるべく、現在では高度専門医療にも対応できる設備を整えている。そのような背景の中、離島に勤務しながらも、専門領域に対応できる能力が要求されるようになってきた。特に消化器内科領域においては、癌の早期発見・早期治療のための内視鏡検診・内視鏡治療や、ウイルス性肝炎・肝癌に対する治療などを積極的に行っており、消化器内科医としての活躍の場は多い。しかし、昨今の医療のさらなる高度化が進む中、一定の制約がある中でいかに専門的知識や技術を修得するかが大きな問題であり、同様のことが全国の地方で今後の課題として挙げられる。そこで、長崎県の養成医制度下における消化器内科医師の養成の現状を分析し、今後の課題について自らの経験も交えて検討し報告する。 |