セッション情報 一般演題

タイトル 133:

転移巣が低分化腺癌様の形態をなし、診断に苦慮した肉腫瘍肝癌の1剖例

演者 田口 順(朝倉医師会病院消化器内科)
共同演者 梶原 雅彦(朝倉医師会病院消化器内科), 今村 真大(朝倉医師会病院外科), 城野 智毅(朝倉医師会病院消化器内科), 末次 理成(朝倉医師会病院消化器内科), 馬場 真二(朝倉医師会病院消化器内科), 石井 邦英(朝倉医師会病院消化器内科), 安倍 弘彦(朝倉医師会病院消化器内科), 佐田 通夫(久留米大学内科学講座消化器内科部門)
抄録 症例は67歳、男性。大酒家(焼酎4~5合/日)。平成7年に初めて肝機能異常とHCV抗体陽性を指摘されるが、放置する。平成20年12月、右側腹部痛にて、当科受診。血液検査でT.Bil 0.6mg/dl、AST 59U/l、ALT 79U/l、ALP 449U/l、γGTP 191U/lと肝機能異常を認めた。また、HCV抗体は陽性であった。腹部超音波検査、造影CT検査で、肝は腫大し、多発する腫瘍性病変を認め、血清学的にAFP 14.8ng/ml、PIVKA-II 8856mAU/mlと腫瘍マーカーも高値であり、多発性肝細胞癌と診断した。腫瘍の大部分は造影CTにおいて早期相で高吸収、後期相で低吸収であったが、S6の径75mm大の腫瘍は肝外に突出するように存在し、造影効果に乏しく、結節辺縁のみが高吸収を示した。平成21年1月、肝血管造影を施行し、多発性の腫瘍に対し、肝動脈塞栓療法を行った。治療後、造影CT検査にて、腫瘍は縮小し、腫瘍マーカーも低下した。しかし、経過中腰痛が出現し、骨転移の診断で整形外科にて治療が行われた。平成22年5月、突然の腹痛のため、当院緊急入院となった。精査の結果、小腸穿孔が認められ、緊急手術となった。手術所見では、小腸に多発する穿孔があり、病理学的検索において、穿孔部位には低分化腺癌様の癌細胞の浸潤が認められた。悪性腫瘍の小腸転移が疑われたが、原発巣は不明であった。以後、徐々に全身状態は悪化し、同年6月永眠された。病理解剖が施行されたが、肝に多発性の腫瘍と、小腸、大腸、副腎、脾臓、胸腔リンパ節、腹腔リンパ節には転移巣と考えられる多数の結節が認められた。組織学的に、肝臓の腫瘍の大部分は肉腫様の形態をなしており、脈管内に一部胞体に粘液を有する低分化腺癌様の形態をなす癌細胞を認めた。また、小腸、大腸、副腎には原発巣と組織形態が異なる腺癌様の癌細胞の浸潤・転移がみられた。肉腫様肝癌は生物学的悪性度が強く、再発・転移を来しやすく、予後不良の肝癌である。今回私共は、腸管への転移を認め、組織形態が原発巣と異なる肉腫瘍肝癌症例を経験した。臨床・病理学的に興味ある症例と考え、報告する。
索引用語 肉腫様肝癌, 小腸転移