セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研57:

長期間のIFN治療により抗GAD抗体異常高値を認め1型糖尿病を発症した肝硬変C型の一例

演者 梅田 雅孝(長崎大学病院 消化器内科)
共同演者 山口 東平(長崎大学病院 消化器内科), 市川 辰樹(長崎大学病院 消化器内科), 赤司 太郎(長崎大学病院 消化器内科), 三根 祥一郎(長崎大学病院 消化器内科), 宮明 寿光(長崎大学病院 消化器内科), 田浦 直太(長崎大学病院 消化器内科), 磯本 一(長崎大学病院 消化器内科), 竹島 史直(長崎大学病院 消化器内科), 中尾 一彦(長崎大学病院 消化器内科)
抄録 症例は61歳男性。1996年にC型慢性肝炎、特発性血小板減少症の診断。2005年、肝硬変C型(CP-A)と2型糖尿病を診断され食事療法を開始。HCV血清型1型でHCV量高値のため同年9月脾摘を行い、peg-IFN-α2b+リバビリン併用療法を開始、18週目でHCV-RNA陰性化、53週投与し、2006年11月よりpeg-IFN-α2a+リバビリン併用療法に変更、27週追加投与され、合計1.5年リバビリン併用peg-IFN治療を継続したがrelapseした。2007年6月よりIFN-α3M週3回自己注射を開始、一旦ALTは正常化し、HCV-RNAは2007年9月測定感度以下になった。その後HCV-RNAは増加し軽度肝障害も出現、2009年12月 AST 235U/L, HCV-RNA 6.2 logIU/mL、HbA1c6.6%、抗GAD抗体21万U/mL、しかしIFN単剤治療は継続され2010年1月にはALT41、HCVコア蛋白が感度以下にまで低下していた。IL28BSNPはWILDであることが分かり、リバウンド現象様のこの時期にHCVの排除を目指した peg-IFN-α2a+リバビリン併用療法に治療を変更。4週間後にはreal-time PCRでHCV-RNAの陰性化を確認した。その後もIFN療法を継続され、HCV-RNAは陰性で維持され、随時血糖は100mg/dL台で推移していた。しかし、2010年5月随時血糖416mg/dLおよびHbA1c 9.2%と急激な血糖の増悪を認めたため精査加療目的で入院となった。入院時の検査で抗GAD抗体陽性に加え、インスリン分泌低下も認め、1型糖尿病(T1DM)と診断され、IFN治療は中止され、インスリンが導入された。2005年8月、2006年2月の抗GAD抗体は陰性であった。インスリン自己抗体は2010年5月のみ陽性、抗IA-2抗体は経過を通して陰性であった。今回の症例はIFN治療よりHCV-RNAは陰性化したが、T1DMを発症、その為IFN治療は中止されHCV-RNAはrelapseした。我々はかつて抗GAD抗体陽性症例にもIFN治療を安全に行い得たが(肝臓49;122-4.2008)、今回の症例ではIFNの投与はラ氏島の破壊を促し、T1DMの重症化に至った可能性がある。今後、抗GAD抗体陽性症例のIFN誘導性T1DMの発症機序についての検討が必要である。
索引用語 インターフェロン, 1型糖尿病