セッション情報 一般演題

タイトル 78:

前立腺炎による直腸炎症性病変の一例

演者 仁保 宏二郎(原三信病院 消化器科)
共同演者 深浦 啓太(原三信病院 消化器科), 瀧澤 延喜(原三信病院 消化器科), 山田 隆史(原三信病院 消化器科), 茶圓 智人(原三信病院 消化器科), 中村 典資(原三信病院 消化器科), 兼城 三由紀(原三信病院 消化器科), 松坂 浩史(原三信病院 消化器科), 永瀬 章二(原三信病院 消化器科), 千々岩 芳春(原三信病院 消化器科)
抄録 症例は63歳,男性.2005年3月初旬,排尿時痛を主訴に当院を紹介受診し,前立腺炎と診断された.抗生剤(LVFX 400mg/日)の内服による加療を受けた.2週間後の再診時の直腸診で腫瘤を触知したため,S状結腸内視鏡検査を実施した.肛門縁より約1cmの直腸Rb前壁に径約2.5cm程度のなだらかで正常粘膜に覆われた,立ち上がりは比較的急峻な隆起性病変を認めた.中央部は不整で易出血性の潰瘍形成を認めた.内視鏡上は直腸原発の上皮性変化は無く,壁外からの炎症性腫瘍の浸潤が考えられた.造影CT検査では前立腺右葉背側に低吸収領域と周囲に軽度の造影領域を認め,直腸に連続し,前立腺の低吸収領域は明瞭であり,既往もあることより前立腺炎の直腸壁への波及が疑われた.EUSでは,前立腺から連続する低エコー領域が直腸壁におよび,壁肥厚,管腔内への隆起を形成しているように描出され,生検にて明らかな腫瘍性病変は認めなかった.以上より前立腺炎の直腸への波及による病変と診断し,保存的に経過を追った.4月には前立腺炎は軽快し,排尿時痛は消失した.また,隆起性病変は次第に消退し,半年後の内視鏡検査では隆起性病変は著明に縮小した.高度の前立腺炎により直腸,膀胱,尿道などの周辺臓器に炎症が波及し瘻孔などを発症することが知られているが,比較的稀な疾患である.症状は消化器症状と泌尿器症状が重なり合い,炎症が波及する臓器によって多彩な臨床症状を呈する.消化器症状としては腹痛,下痢などがあり,泌尿器症状として,頻尿,排尿時痛などがみられる.今回,前立腺炎による直腸炎症性病変の一例を経験したため,若干の文献的考察を加え報告する.
索引用語 前立腺炎, 炎症性腫瘍