セッション情報 | 一般演題 |
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タイトル | 118:肝膿瘍との鑑別が困難であった胆管細胞癌の一例 |
演者 | 正 宏樹(大分医療センター消化器内科) |
共同演者 | 山下 勉(大分医療センター消化器内科), 岩尾 正雄(大分医療センター消化器内科), 新関 修(大分医療センター消化器内科), 重松 利行(大分医療センター消化器内科), 福地 聡士(大分医療センター消化器内科), 室 豊吉(大分医療センター消化器内科) |
抄録 | 【症例】61歳女性。高血圧、バセドウ氏病のため当院代謝・内分泌内科に通院中。平成22年5月初旬から37℃台の発熱を認め、5月末になっても解熱しなかった。5月末に代謝・内分泌内科を受診した際にWBC:11900、CRP:14.6、LDH:383、γ-GTP:87と高値を認め、右季肋部痛と38℃台の発熱を認めた。腹部単純CTで肝内に多発する腫瘍性病変を認めた。胆嚢内には結石を認めるが胆嚢炎を示唆する所見は認めなかった。同日精査加療目的に消化器内科入院となった。入院後の血液検査ではCEA:60.5と高値であった。腹部エコーでは実質性の腫瘍を疑ったが、腹部造影CTでは肝両葉に多発する肝腫瘍を認めた、その他の臓器には腫瘍性病変を認めなかった。腫瘍はリング状に造影されるが内部は均一で造影効果はほとんどなく壊死しているような所見であった。MRIではT1WIで低信号、T2WIで高信号、DWIで高信号を呈し、辺縁は増強され、内部はほとんど増強されなかった。CTやMRIでは膿瘍や変性の強い腫瘍性病変が考えられた。転移性肝腫瘍も考えられたため上部・下部消化管内視鏡を行ったが腫瘍性病変は認めなかった。鑑別として肝腫瘍が否定できないため肝生検を施行、生検で得た組織の内部は壊死変性の強い組織であった。病理診断の結果は低分化なadenocarcinoma であり胆管細胞癌と診断。シスプラチンとゲムシタビンによる治療を開始した。治療開始後も発熱が継続するためベタメタゾンの内服を開始。その後は速やかに解熱を認めた。現在は外来で化学療法を継続中であるが、肝・胆道系酵素はほぼ正常化し腫瘍マーカーも低下、画像上も腫瘍の縮小を認めている。【考察】今回の発熱の原因として肝膿瘍による発熱、胆管炎、腫瘍熱などが考えられた。肝生検の結果が判明するまではSBT/CPZなどの抗生剤を投与したがWBC、CRPともに低下を認めなかった。胆管細胞癌と診断した後にベタメタゾンの内服開始しWBC、CRPの改善を認めたため発熱の原因は腫瘍熱であったと判断した。【結語】発熱を伴う肝内占拠性病変の鑑別疾患として肝腫瘍も念頭に置いて治療を行う必要があると考えた。 |
索引用語 | 肝膿瘍, 胆管細胞癌 |