セッション情報 一般演題

タイトル 69:

びまん性胃粘膜下異所腺を背景に多発した早期胃癌の1例

演者 広瀬 統(福岡市医師会成人病センター)
共同演者 有田 好之(福岡市医師会成人病センター), 森田 勇(福岡市医師会成人病センター), 池田 憲治(福岡市医師会成人病センター), 花野 貴幸(福岡市医師会成人病センター), 喜多村 裕次(福岡市医師会成人病センター), 田中  伸之介(福岡大学医学部消化器内科), 山下  裕一(福岡大学医学部消化器内科), 二村 聡(福岡市医師会成人病センターDELIMITER福岡大学医学部消化器外科)
抄録 びまん性胃粘膜下異所腺を背景に多発した早期胃癌の1例福岡市医師会成人病センター 消化器内科広瀬 統、池田 憲治、花野 貴幸、森田 勇、喜多村 祐次、有田 好之福岡大学医学部 消化器内科、青柳 邦彦、向坂 彰太郎同消化器外科 田中 伸之介、山下 裕一同病理学講座 二村 聡症例は70歳代、男性。2007年2月24日に心窩部不快感を認め来院した。上部消化管内視鏡検査にて胃体上~中部小弯後壁側に不整な陥凹性病変を認めた。陥凹周囲の粘膜はやや粘膜下腫瘍様に隆起していた。拡大観察にて、陥凹部の微細表面構造や微細血管構造の不整を認めた。超音波内視鏡では陥凹部は低エコー性病変として描出され、一部第3層への浸潤が疑われた。また、第3層には無エコーの嚢胞性病変が散在していた。上部消化管造影検査にても、胃体上~中部小弯後壁側に不整な陥凹病変を認め、陥凹周囲の粘膜はやや粘膜下腫瘍様隆起として描出された。病変部よりの生検では中~低分化型腺癌であった。以上より粘膜下層に浸潤した可能性のある早期胃癌と考えられた。外科的切除の適応と考え、同年3月22日福岡大学病院消化器外科に転院となった。3月27日胃分節切除術を施行された。切除標本の病理組織所見では体中部小弯後壁側の陥凹性病変は粘膜下層に3200μm浸潤する高~中分化型管状腺癌(45×25mm)であった。同病変以外にも遠位側切除断端近傍に粘膜下層に浸潤する高分化型腺癌(5mm)と体中部後壁に粘膜内高分化型腺癌(2mm)を顕微鏡的に同定できた。背景胃粘膜は中等度の慢性胃炎の状態で、粘膜下層に拡張した異所性胃腺管を認めた。異所性胃腺管を伴う胃粘膜にはびらんや再生像が認められ、癌発生因子として働く慢性炎症発生の過程が胃粘膜下に異所性腺管を発生させるため、胃癌合併が多いという報告が散見される。岩永らはびまん性胃粘膜下異所腺を認めた切除胃の98%に胃癌が合併し、特に多発胃癌の頻度がその33%と高率であることを報告している。本症例でもびまん性胃粘膜下異所腺に併存した多発胃癌の症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 びまん性胃粘膜下異所腺, 胃癌