セッション情報 |
一般演題
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タイトル |
64:保存的に加療した腸管気腫症・門脈ガス血症の1例
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演者 |
松田 史雄(熊本赤十字病院外科) |
共同演者 |
木村 有(熊本赤十字病院外科), 横溝 博(熊本赤十字病院外科), 山根 隆明(熊本赤十字病院外科) |
抄録 |
症例は90才女性。誤嚥性肺炎で他院入院中であったが、発熱・嘔吐が出現し、腹部XP、CTでイレウスと診断され、当院へ転院となった。当院来院時、意識レベルGCSスコア9(E3V2M4)、体温38.7℃、血圧91/55mmHg、脈拍156回/分・整、呼吸数27回/分、腹部は軽度膨隆し、腸音の減弱を認めた。全体的に軟らかく、認知症もあり意思の疎通が難しかったが、触診で特に痛がる様子はなかった。WBC 18100/μl、CRP 9.66mg/dlと白血球数と炎症反応の上昇を認めた。LDH、CKは正常範囲内で、代謝性アシドーシスは認めなかった。当院で施行した腹部CTでは小腸の拡張と腸液の貯留、および前医では認めなかった腸管気腫像と、肝臓の左葉優位に肝表面に及ぶ樹枝状ガス像を認めた。腸管の粘膜は造影された。上腸間膜動静脈に異常は認めなかった。大腸には便塊の貯留を認めた。腸管気腫症・門脈ガス血症と診断し、原因として非閉塞性腸間膜虚血症などによる腸管虚血・壊死を疑い緊急手術を考慮したが、年齢・全身状態より施行困難と考えられた。一方で臨床および検査所見は腸管壊死を示唆するものではなかった。最終的に経過観察する方針となり、補液・抗生物質の投与を行った。翌日施行のCTで腸管気腫症・門脈ガス血症の改善を認め、入院8日目に施行したCTでは完全に消失していた。全身状態の改善を認め、入院9日目より経管栄養を開始し、経過良好で入院16日目に前医へ転院となった。本症例の腸管気腫症・門脈ガス血症の原因として糞便イレウスが疑われた。腸管気腫症・門脈ガス血症は腸管壊死を示唆し、予後不良で緊急手術を考慮する指標とされてきたが、近年、腸管壊死によらない、保存的加療にて軽快した症例も多数報告されるようになり、認識を改める必要がある。若干の文献的考察を含めて報告する。 |
索引用語 |
腸管気腫症, 門脈ガス血症 |