セッション情報 一般演題

タイトル 148:

肝門部胆管癌を発症した自己免疫性肝炎の一例

演者 山口 東平(長崎大学病院 消化器内科)
共同演者 三根 祥一郎(長崎大学病院 消化器内科), 赤司 太郎(長崎大学病院 消化器内科), 福田 祥子(長崎大学病院 消化器内科), 大谷 正史(長崎大学病院 消化器内科), 松崎 寿久(長崎大学病院 消化器内科), 村岡 徹(長崎大学病院 消化器内科), 本田 琢也(長崎大学病院 消化器内科), 宮明 寿光(長崎大学病院 消化器内科), 田浦 直太(長崎大学病院 消化器内科), 市川 辰樹(長崎大学病院 消化器内科), 足立 智彦(長崎大学大学院 移植・消化器内科), 黒木 保(長崎大学大学院 移植・消化器内科), 磯本 一(長崎大学病院 消化器内科), 竹島 史直(長崎大学病院 消化器内科), 鳥山 寛(日本赤十字社 長崎原爆病院 病理部), 兼松 隆之(長崎大学大学院 移植・消化器内科), 中尾 一彦(長崎大学病院 消化器内科)
抄録 症例は70歳男性。慢性心房細動と高血圧にてかかりつけ医受診されていたが、H15年11月より肝機能異常出現、増悪を認めたため精査目的にて近医入院となる。AST:664、ALT:983、ALP:552、γ-GTP:212、T-bil:0.97と肝機能異常と肝炎ウイルスマーカー陰性、自己抗体陰性(ANA:40倍、LKM-1抗体(-)、AMA-M2陰性)であったが、肝生検による病理組織診断にてリンパ球・形質細胞浸潤を認めたことにより自己免疫性肝炎(AIH)と診断された。プレドニゾロン(PSL)30mg内服加療開始され肝機能は一時軽快したが、PSL10mgから肝機能変動が続くためH17年7月に当科紹介となる。PSL増量及びウルソデオキシコール酸内服開始されるも変動が続き、H19年1月よりアザチオプリン開始され肝機能は徐々に落ち着いた。H22年2月の腹部エコー及び4月に腹部造影CTで肝両葉の肝内胆管拡張と左右肝管合流部の胆管の走行に沿い辺縁不整の造影効果を認め5月当科入院となる。ERCP行い右肝管の狭窄と右肝内胆管の拡張を認めた。画像上硬化性胆管炎も考えられたが、胆汁細胞診の結果Class4の診断であり、エコー下肝生検にて形質細胞の浸潤やinterface hepatitisが存在し、periductal fibrosisは認められず、肝門部胆管癌と診断された。治療法として右3区域切除術が考慮されたが、アシアロシンチにてHH15:0.714、LHL15:0.856と肝機能低下を認め手術不可と判断され、化学療法(ゲムシタビン単独療法)が導入された。胆管癌のリスクファクターとして膵・胆管合流異常症や硬化性胆管炎などが一般的に知られているが、最近になり慢性肝炎や肝硬変なども指摘されている。しかし、その場合の胆管癌は腫瘤形成型が多く、本症例のような胆管浸潤型や胆管内発育型では併存率は低い。慢性肝炎の原因はウイルス性肝炎が75%以上と多く、AIH例は認めていない。また成人例についてはAIHからPSCへの進展例は1.7%と低率であるといわれ、オーバーラップ症候群は起こしにくい。以上より成人発症のAIHに胆管癌を合併した報告は非常に稀であると考えられ、文献的考察を加え報告する。
索引用語 自己免疫性肝炎, 胆管癌