セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研74:

在宅中心静脈栄養中の軟治性Crohn病にCVカテーテル先端から右房内に伸展する巨大血栓を生じた1例

演者 石井 泰明(宮崎大学第一内科)
共同演者 芦塚 伸也(宮崎大学第一内科), 中野 みち子(宮崎大学第一内科), 日高 梓(宮崎大学第一内科), 彦坂 ともみ(宮崎大学第一内科), 星子 新理(宮崎大学第一内科), 松本 英丈(宮崎大学第一内科), 早稲田 文子(宮崎大学第一内科), 中島 孝治(宮崎大学第一内科), 稲津 東彦(宮崎大学第一内科), 北村 和雄(宮崎大学第一内科)
抄録 30歳代、女性。1993年に小腸型Crohn病と診断され、2001年に小腸部分切除を施行された。2006年にレミケード療法を開始した。また同年、当院第一外科にてSeton drainagを施行された。2007年よりイムランを併用したが、脱毛のため中止した。その後、活動性が持続し、低蛋白血症(1.7-2 g/dl)が出現した。2009年4月からはレミケード投与間隔を6週に短縮したが、寛解導入は得られなかった。アルブミンシンチで結腸からの蛋白漏出を認め、内視鏡・造影では小腸~直腸にかけて縦走潰瘍が多発し、大腸には強い狭窄を伴っていた。レミケードの効果も2週間程度となり、2009年12月に左鎖骨下にCVポートを留置し、在宅中心静脈栄養(HPN) を導入した。しかし、その後も腹痛が持続し、2010年6月2日に当科入院となった。小腸造影で下部空腸の小腸狭窄形成術部(Finney)に高度狭窄を生じており手術適応と判断した。
ところが、術前心エコーにて上大静脈内のCVカテーテル先端から右房内に伸びる4×1cmの浮遊塊を認めた。塊状物は可動性が高く、右房内と右室内を行き来し、心房内血栓または疣贅が疑われた。肺換気血流シンチで肺野抹消に多発肺塞栓像を認めたが、D-ダイマー上昇や感染兆候を伴わず、血栓か疣贅かの鑑別は困難であった。既存の肺塞栓悪化予防目的も含めヘパリンを持続投与したが、血栓(疣贅)は経時的に増大傾向を示し、保存的加療は困難と判断した。2010年7月、当院第二外科にて右開胸による右房内血栓(疣贅)除去術を施行した。摘出腫瘤は8×1.5cm大で、病理学的診断は血栓であった。
難治性Crohn病に対してHPNを余儀なくされる症例が存在するが、血栓症やポート感染などの合併症の報告が散見される。今回、我々はHPN管理中に上大静脈内のCVカテーテル先端から右心房内に巨大血栓を合併した症例を経験したため、若干の考察を加え報告する。
索引用語 Crohn病, 右房内血栓