セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研19:

診断に苦慮した胃悪性小円形細胞腫瘍の1例

演者 藤元  紗代子(九州大学大学院 病態機能内科学)
共同演者 山本 充了(九州大学大学院 病態機能内科学), 中村 昌太郎(九州大学大学院 病態機能内科学), 森山 智彦(九州大学大学院 病態機能内科学), 上田 純二(九州大学大学院 臨床腫瘍外科学), 永井 英司(九州大学大学院 臨床腫瘍外科学), 藤田 恒平(九州大学大学院 形態機能病理学), 平橋 美奈子(九州大学大学院 形態機能病理学), 山元 英崇(九州大学大学院 形態機能病理学), 黒岩 三佳(国立病院機構 福岡東医療センター), 田中 宗浩(国立病院機構 福岡東医療センター), 松本  主之(九州大学大学院 病態機能内科学)
抄録 症例は63歳、男性。糖尿病のため福岡東医療センターに通院中であった。2010年4月1日,特に誘因なく突然の腹痛が出現し,同院を受診した。腹部CTで消化管穿孔を疑われ,同日緊急手術となった。胃前庭部前壁に微小穿孔を認め、穿孔閉鎖・大網被覆術を施行された。術後に施行した上部消化管内視鏡検査で前庭部に大きな潰瘍性病変を認め,生検でMALTリンパ腫が疑われたため精査加療目的で当科紹介入院となった。胃X線・内視鏡検査では前庭部小弯~幽門部に潰瘍形成を伴う粘膜下腫瘍様隆起を認め,EUSでは第2層から第4層に及ぶ低エコー性腫瘤として描出された。潰瘍辺縁からの生検で内分泌細胞癌が疑われたが,確定診断には至らなかった。FDG-PETでは胃病変のみに異常集積を認め,遠隔転移を示唆する所見はみられなかった。同年8月16日、腹腔鏡補助下幽門側胃切除術を施行した。切除標本では前庭部小彎に中心陥凹を有する3.5×3.0cm大の粘膜下腫瘍様隆起を認め,襞の集中を伴っていた。組織学的には,陥凹部にUl-IIIの潰瘍瘢痕を認め,口側の隆起部分の粘膜下層および粘膜深層に小型円形異型細胞の浸潤を認めた。免疫組織化学染色では,異型細胞はシナプトフィジン,ビメンチン,CD56に陽性,サイトケラチン(CAM5.2,AE1/AE3,CK7,CK8,CK18,CK20),リンパ系マーカー(CD45,CD3,CD20,CD79a),c-Kitは陰性,CD99はごく一部に弱陽性で,Ki-67標識率は約70%以上ときわめて高値であった。以上の所見より,CD99陰性の末梢性未分化神経外胚葉性腫瘍(Ewing肉腫)またはサイトケラチン陰性の内分泌細胞癌のいずれかと考えられた。 今後,RT-PCRによるEwing肉腫に特異的な遺伝子異常の解析を追加する予定である。なお,所属リンパ節に転移は認めなかった。胃悪性小円形細胞腫瘍は稀な疾患群であり,鑑別診断を含む文献的考察を加えて報告する。
索引用語 胃悪性小円形細胞腫瘍, 末梢性未分化神経外胚葉性腫瘍