セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研63:

高齢者(80才以上)肝細胞癌の特徴および術後経過

演者 友延 寛(国立病院機構九州医療センター肝臓病センター外科・臨床研究部)
共同演者 高見 裕子(国立病院機構九州医療センター肝臓病センター外科・臨床研究部), 龍 知記(国立病院機構九州医療センター肝臓病センター外科・臨床研究部), 和田 幸之(国立病院機構九州医療センター肝臓病センター外科・臨床研究部), 才津 秀樹(国立病院機構九州医療センター肝臓病センター外科・臨床研究部)
抄録 近年、平均寿命の延長、周術期管理などの向上に伴い、高齢者に対する外科治療が増加しており、肝細胞癌(HCC)もまたその例外ではない。今回、当科の高齢者HCCの特徴と、治療経過について検討したので報告する。 【対象と方法】1994年7月より2009年12月末までに当科で外科治療を施行したHCCのべ2116例中初発HCCは845例。これを80才未満のYoung群(Y群)787例と80才以上のAged群(A群)58例(80から94才、平均年齢82.3才)の2群に分けて比較検討した。  【結 果】Y群の女性の比率が29.4%であるのに対し、A群は43.1%と女性の比率が増加した(P=0.0311)。背景肝疾患としてHBV/HCV/B&C/nonBnonCの症例数はY群が109/540/14/121、A群は2/41/0/15と有意にウイルス性肝炎の関与しないHCCが増加し、約4分の1を占めていた(P=0.0270)。背景肝機能としてアルブミン値、総ビリルビン値、ICG15分値、肝障害度には有意差はなく、またHCC腫瘍径・腫瘍個数、病期にも差はなかった。 A群でHCC以外の癌が重複する割合が高い傾向にあるものの(11.4% VS 7.8%)、他病死の割合には差を認めなかった(6.90% VS 5.49%, P=0.6513)。 A群の1,3,5,10年生存率は96.9、72.6、41.1、-%であり、Y群の95.7、78.1、60.5、31.9%と比較して有意差はなかった(P=0.0572)。 なお、クリティカルパスが設定された過去5年間で、術後合併症、術後在院日数には、A群とY群に有意差はなかった。 【結 語】高齢者のHCCは肝炎ウイルスの関与しないものが多く、男性の割合が少なくなる特徴があった。 術後合併症、在院日数、また長期の累積生存率も80歳以下のHCCとほぼ同等の結果が得られることから、年齢に躊躇せず、積極的に外科治療を選択して良いと考えられた。
索引用語 肝癌外科治療, 高齢者