セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研47:

内ヘルニアによる絞扼性イレウスにて発見された成人腸回転異常症の一例

演者 百合野  彩乃(新日鉄八幡記念病院 外科)
共同演者 鎌田  宏二(新日鉄八幡記念病院 放射線科), 金城  直(新日鉄八幡記念病院 外科), 杉町  圭史(新日鉄八幡記念病院 外科), 池部  正彦(新日鉄八幡記念病院 外科), 東  秀史(新日鉄八幡記念病院 外科)
抄録 【はじめに】腸回転異常症は胎児期の上腸間膜動脈を軸とした腸回転と固定の異常により生じる稀な疾患である。腸回転異常に起因する内ヘルニアに対して緊急手術を施行した症例を経験したので報告する。【症例】46歳男性【既往歴】特記事項なし、手術歴なし【現病歴】平成22年7月上旬より2時間程持続する腹痛を3回認めていた。8月20日にも腹痛が出現、軽快しないため当院へ救急搬送となった。触診で圧痛・筋性防御を認めた。造影CTで腹部正中左側寄りに、液面形成を伴う限局性に拡張した造影不良な小腸を認め、肝表面・骨盤内に腹水貯留を認めた。また、腹部大動脈と上腸間膜動脈の間に十二指腸水平脚に認めず腸回転異常が疑われた。腸回転異常症に伴う絞扼性イレウスと診断し緊急開腹術を施行した。【開腹所見】Treitz靱帯は右側から出ており、盲腸・上行結腸が後腹膜に固定しておらず移動盲腸の状態であった。回腸末端の腸間膜と結腸間膜が癒着してできた空間に小腸が多量に入り込んでいた。虫垂間膜と腸間膜の間に索状物を認め小腸がループとなって絞扼されていた。小腸は発赤浮腫が強かったが壊死所見は認めなかった。索状物を切離し絞扼を解除した後、虫垂切除術を行い手術を終了した。術後経過は良好であり術後10日目に退院した。【考察】腸回転異常症の多くは新生児期までに胆汁性嘔吐等を主訴に発見されるが、本症例のように新生児期には診断できず成人になって有症状で発見される例も報告されている。術前のCTで腸回転異常の所見を認めており、注意深い読影により診断が可能な場合もある。成人の絞扼性イレウスの鑑別疾患として腸回転異常症の存在も念頭におき、腸管の走行に注意した読影をすることが重要である。今回、絞扼性イレウスにて発見された成人腸回転異常症の一例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 腸回転異常, 絞扼性イレウス