抄録 |
【症例】77歳男性.腹痛を主訴に近医を受診された.腹膜刺激症状と炎症反応の上昇を認め,急性腹症が疑われ当院紹介となった.血液検査で炎症反応の上昇(WBC 25600/mm3,CRP 20.2 mg/dl )を認め腹部CTで腸管の造影不良部位を認めた.絞扼性イレウスの診断で緊急手術を施行した.【術中所見】癒着によるバンドのため小腸が絞扼されていた.小腸壊死部90cmの小腸部分切除を施行した.【術後経過】術後5日間は人工呼吸器管理を行った.術後12日目より食事を再開した.翌日より40度の発熱を認めた. 腹腔内膿瘍や肺炎を疑いCTを施行したが異常は認められなかった.血液検査では炎症反応(WBC 12700/mm3,CRP 15.3 mg/dl)と血中エンドトキシン:21.0pg ,β-Dグルカン:29.8pgの上昇を認めた .血液培養検査でStenotrophomonas maltophliaが検出され細菌感染と真菌感染による敗血症とエンドキシンショックと診断しエンドトキシン吸着療法(PMX)と抗生剤(IPM)坑真菌剤(AMPH-B)の投与を開始した.翌日より熱は下降し血圧は安定した.術後19日目に再度発熱を認めた.血液検査では汎血球減少(WBC 4400/mm3,Hb 8.1g/dl, Plt 4.0 104/μl)と黄疸(4.6mg/dl)を認めた.敗血症の再燃を疑い抗生剤と抗真菌剤の投与を継続するも発熱・汎血球減少・黄疸は持続し血球貪食症候群を疑った.骨髄穿刺を施行したところ血球の貪食像を認め血球貪食症候群(HPS)と診断しステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン1000mg 3日間投与)を施行した.治療開始後に症状はすみやかに軽快した.ステロイドは漸減し投与中止後も症状の再発無く術後40日目に退院となった.【まとめ】今回の症例ではHPSの主な起因ウイルスとされるEBウイルスは認められず.敗血症に起因した2次性のHPSと考えられた. HPSは治療が遅れた例では短期間に症状が増悪し死亡する例が多く,早期の治療が予後を改善すると報告されている. 周術期に発熱・血球減少・黄疸を認めた場合はHPSの可能性を念頭に置き診断・治療が必要と考える. |