セッション情報 専修医発表(卒後3-5年)

タイトル 専27:

健常成人に発症したCMV肝炎の2例

演者 早川 学(串間市民病院)
共同演者 黒木 和男(串間市民病院), 井上 龍二(串間市民病院), 中西 千尋(串間市民病院), 藤原 利成(串間市民病院), 相良 誠二(串間市民病院)
抄録 1例目は30歳代の女性。基礎疾患はなく、アルコールは機会飲酒程度であり、既往歴に特記事項なし。2009年8月上旬より全身倦怠感、食欲不振、発熱、腰背部痛が出現した。近医で肝酵素値の上昇を指摘され、2009年8月中旬に当科入院となり、血液検査でAST:997 IU/l , ALT:1249 IU/l , LDH:1035 IU/l , ALP:1414 IU/l と肝胆道系酵素値の上昇を認めた。また、リンパ球優位の白血球数上昇、異型リンパ球の出現を認めた。身体所見として、表在リンパ節、肝・脾臓は触知しなかった。腹部エコーでは、肝内エコー輝度の全体的な減弱と門脈壁の相対的な輝度上昇、また脾腫を認めた。以上の所見から急性肝炎と診断した。検査所見からは、A型・B型・C型肝肝炎は否定された。また、薬剤性は否定的であり、自己免疫性肝炎・PBCも否定的であった。EBVは既感染パターンであった。サイトメガロウィルス(CMV)に関しては、CMV pp65抗原(+)、CMV IgM:5.26(+)であり、以上の所見からCMV感染による急性肝炎と診断した。2例目は20歳台の男性であり、基礎疾患なし。2010年7月中旬、発熱と倦怠感を主訴に近医受診し、肝機能障害を指摘され2010年7月下旬当科入院となり、AST:127 IU/l , ALT:260 IU/l , LDH:521 IU/l , ALP:717 IU/l と肝胆道系酵素値の上昇を認めた。身体所見上は特記所見を指摘できず、検査所見よりCMV pp65抗原(+)、CMV IgM:5.26(+)であり、以上の所見からCMV感染による急性肝炎と診断した。いずれの症例も肝生検を施行し、肝組織像では線維化・壊死の程度は軽度であり、核内封入体は指摘できなかった。また免疫不全の原因となり得る基礎疾患は指摘できなかった。入院後は、経過観察により肝胆道系酵素値は低下した。 近年、CMVの成人での初感染が増加してきているとされ、健常人でも肝炎を起こすことが知られている。通常は対症療法で予後良好とされているが、健常人でも重症化する例も報告されている。健常成人に発症したCMV肝炎の症例は稀であるため、文献的考察を加えて報告する。
索引用語 サイトメガロウィルス, 健常成人