セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研34:

術中に診断したparagangliomaの一例

演者 橋本 理沙(九州医療センター 消化器センター外科 臨床研究センター)
共同演者 櫻井 眞人(九州医療センター 消化器センター外科 臨床研究センター), 立石 昌樹(九州医療センター 消化器センター外科 臨床研究センター), 楠元 英次(九州医療センター 消化器センター外科 臨床研究センター), 上原 英雄(九州医療センター 消化器センター外科 臨床研究センター), 山口 将平(九州医療センター 消化器センター外科 臨床研究センター), 遠藤 和也(九州医療センター 消化器センター外科 臨床研究センター), 池尻 公二(九州医療センター 消化器センター外科 臨床研究センター)
抄録 【症例】70歳、男性【主訴】左下腹部痛【現病歴】高血圧、糖尿病にて前医通院中であったが、2010年6月から時々左腹部から背部の疼痛を自覚するようになった。CT上腹部に7cm大の腫瘤を指摘され、7月に当院紹介となった。CT上、後腹膜左側に最大径7cm大の腫瘍を認め、後腹膜腫瘍の診断で手術目的にて入院となった。【既往歴】30年前.胃潰瘍にて胃切除術、20年前.胆石症にて胆嚢摘出術、5年前.心筋梗塞【画像検査所見】CT:後腹膜左側の椎体、腎臓、胃の間に径76x58mm大の境界明瞭で中等度の造影効果を伴う腫瘍を認めた。MRI:辺縁にわずかに増強効果がみられるが、全体としてhypovascular massとして認め、粘液様変化をきたす後腹膜腫瘍が疑われた。【手術所見】左腎静脈下縁、腹部大動脈左縁に接して凹凸不整な硬い腫瘤を触知したが周囲臓器への明らかな浸潤所見は認めなかった。トライツ靱帯より尾側の後腹膜を切開して腫瘍に沿って周囲を剥離した。腫瘍を用手的に脱転すると収縮期血圧200以上と上昇するため、授動を極力避けながら剥離を進め、腹部大動脈から直接分岐する栄養動脈を結紮切離して摘出した。摘出後は昇圧剤投与するも60前後と低血圧状態となった。腫瘍の局在と術中の血圧変動からparagangliomaと診断した。【術後経過】手術直後から徐々に血圧上昇し、翌日には昇圧剤も中止できた。術後2日目からは血圧180以上と上昇し、3日目には術前内服していた降圧剤を再開した。術後合併症なく経過良好であった。【病理組織診断】paraganglioma【まとめ】術中の血圧変動で診断したparagangliomaの一切除例を経験した。傍大動脈領域の原発不明腫瘍に対しては、paragangliomaの可能性も念頭におき、術前血中、尿中カテコールアミン測定も含めた精密検査と慎重な周術期血圧管理が必要と考えられた。
索引用語 パラガングリオーマ, 後腹膜腫瘍