セッション情報 専修医発表(卒後3-5年)

タイトル 専13:

噴門側胃切除後の縫合不全に対しT-tube留置、肋間筋弁被覆が有効であった1例

演者 泉 大輔(熊本大学消化器外科)
共同演者 長井 洋平(熊本大学消化器外科), 渡邊 雅之(熊本大学消化器外科), 原田 和人(健康保険人吉総合病院), 高城 克暢(熊本大学消化器外科), 東 孝暁(熊本大学消化器外科), 今村 裕(熊本大学消化器外科), 岩上 志朗(熊本大学消化器外科), 宮本 裕士(熊本大学消化器外科), 岩槻 政晃(熊本大学消化器外科), 林 尚子(熊本大学消化器外科), 馬場 秀夫(熊本大学消化器外科)
抄録 【症例】52歳男性。前医にて胃噴門部早期胃癌に対し完全鏡視下噴門側胃切除施行。食道残胃吻合はoverlap法。Marginのため食道を切り上げ,最終的に吻合部が胸腔内に3cm入った。術後1日目より呼吸苦・左胸水貯留があり、縫合不全の可能性を考え、胸腔ドレーン及び胃管を留置し、抗生剤にて保存的に加療。術後3日目発熱、胸腔ドレーン排液の混濁化、炎症反応上昇あり、縫合不全による縦隔炎・左膿胸の診断で、再手術目的で当科紹介。当院搬入後すぐに緊急手術を施行。右側臥位にて左第5肋間前側方切開にて開胸。胸腔内全体に混濁した胸水貯留、左肺全面が醸嚢胸膜に覆われており、これを剥離し洗浄。下縦隔に吻合部があり、吻合部左側に5mmの穿孔部が2個連続しておりentry holeの縫合不全と考えられた。高度の炎症により周囲の組織は脆弱で縫合閉鎖は不可能であり、 T-tube24Frを縫合不全部から挿入し、吻合部に留置。縫合不全部近傍の組織を可及的に縫合閉鎖した上で、その周囲を覆うように肋間筋弁にてドレナージと外瘻化目的で被覆。左胸腔ドレーンを計4本留置し手術を終了。術後は長期の集中管理と胸腔ドレーンからの洗浄、入れ替えを必要としたが、徐々に炎症は改善。術後42日目T-tubeを抜去し、ネラトンチューブに入れ替えた。以後はネラトンチューブを浅くし術後59日目に抜去。術後49日目より経口摂取を開始し、術後75日目に退院。【まとめと考察】噴門側胃切除術後縫合不全に対し、T-tube留置が有効であった症例を経験した。本症例では下縦隔内での縫合不全により縦隔炎、左膿胸となり左開胸による再手術を必要とした。発症より再手術まで約72時間経過しており、炎症が高度であった。組織は脆弱で一期的閉鎖は不可能であること、大網充填は困難であること、侵襲と後のQOLの問題から吻合部・食道抜去も難しいことからT-tubeを留置、肋間筋弁被覆による処置を選択した。消化管関連の報告で、特発性食道破裂や小腸、十二指腸穿孔に対するT-tube留置の有用性を示したものが十数件あるが、噴門部胃切除後の縫合不全に対するものは無かった。
索引用語 縫合不全, T-tube