セッション情報 パネルディスカッション14(消化器病学会・肝臓学会合同)

急性肝不全:新たな定義とこれに準拠した診療の展望

タイトル 消PD14-10:

当院における急性肝不全の検討~成因不明例の特徴とガイドラインを用いた肝移植適応~

演者 村岡 優(武蔵野赤十字病院・消化器科)
共同演者 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院・消化器科), 泉 並木(武蔵野赤十字病院・消化器科)
抄録 【目的】急性肝障害の原因はウイルス性、自己免疫性、薬剤性など多種多様であるが、成因不明例も多くみられる。我々の施設で経験した急性肝不全のうち成因不明例の特徴に焦点を当てて後ろ向きに検討した。また、急性肝不全では肝移植を念頭に置いた治療戦略が必要となる予後不良例も多く、当施設の劇症肝炎患者において新・旧ガイドラインの有用性について検討した。【方法】2007年1月1日より2012年3月31日までに当院で治療したPT40%未満となった急性肝不全20例を対象とした。その中で特に劇症肝炎例では肝移植適応ガイドラインを用いて死亡予測を行った場合に、新・旧ガイドラインそれぞれの感度・特異度・正診率について検討した。【成績】平均年齢は52.7(30-73)、男性12例(60%)、MELD score20.1±10.3、死亡6例(30%)、救命14例(70%)、移植0例だった。原因は成因不明10例(50%)、自己免疫性3例(15%)、B型肝炎2例(10%)、薬剤2例(10%)、A型肝炎1例(5%)、アルコール1例(5%)、原発性硬化性胆管炎1例(5%)だった。成因不明例では、心血管系・呼吸器・生活習慣病・悪性腫瘍の合併症を有する例が有意に多かった(p=0.002)。死亡例は劇症肝炎亜急性型に有意に多かった(p=0.005)。劇症肝炎9例(急性型4例、亜急性型5例)において、旧ガイドラインを用いた脳症発現時死亡予測は感度40%、特異度20%、正診率33.3%であり、新ガイドラインを用いた場合は感度60%、特異度75%、正診率66.7%だった。成因不明例では新ガイドラインを用いると感度66.7%、特異度100%、正診率80%だった。【結論】PT40%未満となった急性肝不全例のうち成因不明例が半数を占め、その大半は合併症を有する患者だった。基礎疾患治療中に生じた急性肝障害の場合は特に劇症化の可能性を念頭に置いて治療する必要があると思われた。また、少数例での検討ではあるが、新ガイドラインを用いた劇症肝炎の死亡予測は成因不明例において有用であり、肝移植を必要とする患者の良い選定材料となると思われた。
索引用語 急性肝不全, 肝移植