抄録 |
【目的】超音波がん検診基準のカテゴリー判定を一般診療の腹部超音波検査に応用した試用経験について報告する。【方法】対象は、2011年11月から12月に当院において上腹部超音波検査を行なった症例とした。肝臓1,389例、胆道1,365例、膵臓1,411例、腎臓1,397例で、各臓器につきカテゴリー判定と最終診断との比較検討を行った。当施設背景として、がん診療拠点病院としての診療を行っており、腫瘍性病変の存在診断や浸潤評価、悪性腫瘍の再発および転移病変の出現を目的とした超音波検査が多い。【成績】肝のカテゴリー1から5までの内訳は、それぞれ296例(21.7%)、759例(55.6 %)、244例(17.9%)、36例(2.6%)、31例(2.2%)。カテゴリー5は全例悪性腫瘍であった。カテゴリー4のうち、臨床診断で悪性腫瘍でなかったものは36例中3例であった。カテゴリー2は全例精査を行っていないが、悪性腫瘍が明らかとなった例はなかった。カテゴリー3を詳細に検討したところ、明瞭な特徴所見は描出できないが良性腫瘍を疑い経過観察されている例、限局性病変を認めない肝硬変例、画像上良悪性の鑑別困難例に大別された。この結果に基づき独自に現カテゴリーに改変を加え、カテゴリー3を3a(良性と確信できない限局性病変)、3b(悪性腫瘍の高危険群)、3c(良悪性の判定困難な病変/悪性病変を疑う間接所見)として区別すると、それぞれ4%、4%、9.5%であった。胆道、膵臓、腎臓の各臓器についても、現カテゴリーの判定を行い、肝同様にカテゴリー3を3a、3b、3cと分割し検討を行った。カテゴリー判定を行うことで、事後指導を含めての判断に利便性が高いと考えられる。【結論】腹部超音波がん検診基準はがんに対する判定基準の標準化に有用と思われる。事後指導管理という面からも、検討を重ねることが必要であると考える。当基準の普及により施設間でのばらつきの多かった超音波検査の均質化をはかり、質的向上につながることを期待する。さらに議論を深めてゆくことで、がん検診として精度の高い腹部超音波検査につながると考える。 |