セッション情報 パネルディスカッション16(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

上部消化管癌に対する鏡視下手術の長期成績

タイトル 外PD16-1:

胃癌に対する腹腔鏡下胃切除術1000例の長期成績

演者 河村 祐一郎(藤田保健衛生大・上部消化管外科)
共同演者 佐藤 誠二(藤田保健衛生大・上部消化管外科), 宇山 一朗(藤田保健衛生大・上部消化管外科)
抄録 【目的】近年、低侵襲性を期待して、腹腔鏡下胃切除術を希望する胃癌患者は増加している。しかし、早期胃癌に対する腹腔鏡下幽門側胃切除(LDG)については、いくつか報告を認めるものの、ハイリスク患者への安全性、進行胃癌に対する根治性のエビデンスは十分でない。エビデンスを得るためにはRCTも必要となるが、確定的な結論を得るためには腹腔鏡下手術の習熟度が一定水準に達することが前提となる。今回我々は、多彩な臨床像を含む前向きデータベースを基に、術後合併症の危険因子、短期成績、長期成績を解析し、進行胃癌への適応拡大に関するRCTが可能と思われるSubsetについて検討したので報告する。【方法】1997年から2011年2月までに当科で、R0切除を目的としたリンパ節郭清を伴う腹腔鏡下胃切除術を施行した1000例を対象とした。術後合併症の危険因子について、多変量解析を行った。生存曲線はKaplan-Meier法を用いた。【成績】Morbidity:22.6%、Mortality:0.1%。術後合併症の危険因子は、年齢、性別、併存疾患、手術既往、初回から100例、腹腔鏡下胃全摘術(LTG)、手術時間、出血量であった。LTGはLDGと比較すると高頻度に縫合不全、膵液瘻を認めた。一方LDGは、年齢以外の患者背景によらず安定した短期成績であった。臨床病期別の5年生存率はそれぞれ、IA:99.1%、IB:94.2%、II:73.5%、IIIA:59.2%、IIIB:35.3%、観察期間中央値は42.5ヵ月。【結論】ハイリスク患者への腹腔鏡下胃切除術は、熟練するまでは、適応に慎重であるべきである。進行胃癌へ適応拡大すると、大型腫瘍が増えLTGの施行率が増加するが、現時点ではLTGは発展途上であり今後の改善が期待される。一方LDGは安定した短期成績であった。進行癌においても長期成績は許容範囲内であった。LDGに限れば、一定の実績と経験ある施設においては適応拡大に関するRCTの準備が整った段階と考える。
索引用語 腹腔鏡下胃切除術, 長期成績