セッション情報 ワークショップ1 自己免疫性膵炎をめぐる諸問題

タイトル WS1-01:

自己免疫性膵炎診断の問題点

演者 橋元 慎一(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学)
共同演者 嵜山 敏男(鹿児島大学病院 光学医療診療部), 牧野 智礼(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 小牧 祐雅(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 隈元 亮(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 岩下 祐司(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 指宿 和成(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 山路 尚久(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 瀬戸山 仁(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 藤田 浩(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 船川 慶太(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 山元 隆文(星塚敬愛園 内科), 坪内 博仁(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学)
抄録 (目的)自己免疫性膵炎(AIP)は比較的新しい疾患概念で、全身疾患(IgG4関連疾患)の膵病変と考えられるようになってきた。しかし、血清IgG4値が低値で診断に苦慮する症例も経験する。今回、当科で診断したAIP症例について診断の根拠となった所見を解析し、AIP診断における問題点を検討した。(方法)H17年8月~H23年3月までに当科でAIPと診断した9例を対象とした。診断に至った所見およびIgG4関連疾患の所見について検討した。(成績)年齢は50歳から79歳、男性5例、女性4例であった。血清IgG値は全例で基準値以上、血清IgG4値は7例(78%)で高値であった。抗核抗体は5例で陽性であった。EUS-FNAによる膵生検は5例に施行され、1例しかIgG4陽性形質細胞を認めなかった。EUS-FNAで診断できなかった1例に対しては開腹膵生検を行い、IgG4陽性形質細胞を含むAIPの組織所見を認めた。組織学的に診断できなかった7例は膵画像所見と血液所見のみでAIPと診断されていた。このうち血清IgG4が高値であった5例は全例唾液腺生検でIgG4陽性形質細胞が検出された。また、1例はVater乳頭からの生検で、1例は腎生検でIgG4陽性形質細胞を認めた。血清IgG4値が正常域であった2例のうち1例は生検を行っていないが、もう1例はEUS-FNA、唾液腺生検ともにIgG4陽性細胞を認めなかった。 (結論)EUS-FNAによる診断率の低さがAIP診断の問題点と考えられた。しかしながら、血清IgG4高値症例では唾液腺生検がIgG4関連疾患の確定診断に大変有用であった。また、Vater乳頭の生検がIgG4関連疾患の簡便な診断法となる可能性がある。IgG4関連疾患の膵病変としてのAIPの診断には膵外病変の評価が重要と考えられる一方、IgG4関連疾患に含まれないAIPについては、より確実な組織診断法や特異的な診断マーカーの開発が必要と考えられた。
索引用語 自己免疫性膵炎, IgG4