セッション情報 ワークショップ4「進行肝細胞癌の治療戦略」

タイトル WS4-08:

根治療法困難な肝細胞癌に対するIVRを用いた治療成績からソラフェニブ投与時期を検討

演者 永松 洋明(公立八女総合病院 内科)
共同演者 鳥村 拓司(久留米大学 消化器内科), 岩本 英紀(久留米大学 消化器内科), 城野 智毅(公立八女総合病院 内科), 澤田 昌幸(公立八女総合病院 内科), 吉田 博(公立八女総合病院 内科), 佐田 通夫(久留米大学 消化器内科)
抄録 【目的】4個以上の多結節肝細胞癌(HCC)、脈管侵襲や肝外転移を有するHCCは根治治療が困難であり予後不良とされる。当院ではadvanced HCC(ad-HCC)に対してIVRを用いた治療を中心に行っている。当院におけるad-HCCに対する治療成績から、状況に応じた治療の選択についてretrospectiveに検討した。【対象】2003年6月から2010年12月の期間当院にてIVR治療を行ったad-HCC症例352例(平均年齢71歳、Child Pugh A/B/C:181/129/42、Stage III/IV-A/IV-B:219/115/18例)を対象とした。【方法】352例全体の累積生存期間(OS)をKaplan-Meier法で示し、Child Pugh別、Stage別、初発・再発別にLog Rank検定を行った。さらに再治療でChild Pugh A症例のOSを示し、治療法別に比較した。また肝外転移の出現について、Stage別に比較し、Stage IV-B後のOSを全身化学療法の有無別に比較した。【結果】ad-HCC352例のOS中央値(MST)は20カ月、Child Pugh A/B/C:27/17/10カ月(P<0.001)、Stage III/IV-A/IV-B:21/18/12カ月(P=0.002)、初発/再発:25/19カ月(P=0.058)であった。再治療253例中Child Pugh Aの症例は101例でMSTは25カ月であった。治療経過中Stage III症例は32例(14%)、IV-A症例は27例(24%)に肝外転移の出現がみられた。肝外転移発症後のMSTは7ヶ月であった。Stage III、IV-A症例のうちChild Pugh Score7点未満の55症例において肝外転移発症時8点以上に上昇したのは13例(23%)で、IV-B症例全体76例中45例(59%)の症例で全身化学療法(ソラフェニブ15例含む)を施行し得た。MSTは、全身化学療法有(45例)/無(31例):12/3カ月(P<0.001)であった。【結論】ad-HCC症例において、初期治療、再発治療ともにIVRを用いることでOSの延長が得られた。OS延長により肝外転移が出現する例も増加してくるが、肝機能を良好に保つことで、多くの症例はソラフェニブを含む全身化学療法への移行が可能であり、さらなるOSの延長が得られた。ad-HCC症例に対して肝内病変はIVRを用いた治療、肝外転移病変出現後にソラフェニブを使用することが最も予後を延長させる。
索引用語 肝細胞癌, IVR治療