セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専86:

長期罹患クローン病に合併した直腸癌の一例

演者 大門 裕貴(福岡大学筑紫病院消化器内科)
共同演者 矢野 豊(福岡大学筑紫病院消化器内科), 二宮 風夫(福岡大学筑紫病院消化器内科), 別府 孝浩(福岡大学筑紫病院消化器内科), 平井 郁仁(福岡大学筑紫病院消化器内科), 松井 敏幸(福岡大学筑紫病院消化器内科), 池田 圭祐(福岡大学筑紫病院病理部), 岩下 明徳(福岡大学筑紫病院病理部), 東 大二郎(福岡大学筑紫病院外科), 二見 喜太郎(福岡大学筑紫病院外科)
抄録 はじめに)近年クローン病も潰瘍性大腸炎と同様に大腸がんの発生率は高いと考えられ、最近の大腸直腸癌の相対危険率は正常人の2~3倍と見積もられている。今回われわれはクローン病術後の小腸大腸吻合部狭窄に対して内視鏡的バルーン拡張術時に発見した直腸癌症例を経験したため報告する。症例)55歳男性。1981年イレウスで発症し、1983年にて小腸型クローン病と診断された。1997年には大腸病変も認め小腸大腸型クローン病と診断された。1986年初回手術より2004年の最終手術までで計4回の手術歴があり、小腸部分切除・残存小腸250cm、回盲部も含む上行結腸~S状結腸切除、回腸‐直腸吻合となった。適宜PSL使用とED600~900kalにて加療されていた。術後吻合部狭窄あり2009年と2010年に内視鏡にて狭窄部拡張術を行った。2011年3月ごろより残便感、腹部膨満感出現した。4月経口小腸造影検査施行したところ、回腸‐直腸吻合部に狭窄を認めた。拡張術目的に入院し5月27日内視鏡的バルーン拡張術施行した。拡張術は成功し合併症なく処置を終了したが、直腸Ra-Rbに粘液産生の目立つ易出血性の絨毛性腫瘍を認めた。癌を疑い積極的に生検を行ったところ、生検結果はGroup4であり、高分化型腺癌が強く示唆された。腹部CTでは遠隔転移やリンパ節転移、管外への浸潤所見は認めなかった。精査内視鏡検査行われ、腫瘍口側に新生血管形成が目立つ陥凹があり粘膜構造の消失と硬化像を認めMP以深の癌が疑われた。6月15日腹会陰式直腸切断術、回腸人工肛門増設術が施行された。術後病理結果は周囲にdysplasiaを伴う超高分化から高分化腺癌の診断で、深達度Aで所属リンパ節転移は認めずA,N0,H0,P0,M0,StageIIであった。考察)クローン病発症後の長期経過例では潰瘍性大腸炎同様癌の発生率は高くなる。本症例でも発症後約30年経過していた。そのため長期経過したクローン病でも潰瘍性大腸炎と同様にサーベランスを行う必要があると考えられる。
索引用語 クローン病, 癌