セッション情報 ワークショップ1「炎症性腸疾患の新しい治療戦略」

タイトル WS1-03:

当科におけるクローン病に対するアダリムマブの短期治療成績

演者 矢野 豊(福岡大学筑紫病院消化器内科)
共同演者 小野 陽一郎(福岡大学筑紫病院消化器内科), 諸隈 強(福岡大学筑紫病院消化器内科), 吉澤 直之(福岡大学筑紫病院消化器内科), 高津 典孝(福岡大学筑紫病院消化器内科), 別府 孝浩(福岡大学筑紫病院消化器内科), 久部 高司(福岡大学筑紫病院消化器内科), 長浜 孝(福岡大学筑紫病院消化器内科), 高木 靖寛(福岡大学筑紫病院消化器内科), 平井 郁仁(福岡大学筑紫病院消化器内科), 八尾 建史(福岡大学筑紫病院消化器内科), 松井 敏幸(福岡大学筑紫病院消化器内科)
抄録 【背景】本邦においても2010年11月よりクローン病(以下CD)に対して完全ヒト型抗TNFα抗体であるアダリムマブ(以下ADA)の投与が可能になった.しかし,治療成績や安全性に関しての報告はまだ少ないのが現状である.【目的】当科におけるCDに対するADAの短期治療成績および安全性について知ること.【対象】2010年11月より2011年6月までCDに対してADAを投与された38例について検討した.【方法】a) CDAI算出可能例: ADA投与4週後と8週後のCDAIを算出し寛解率と有効率を評価した.b)ストーマ症例:10例について4週後と8週後の著効率と有効率を評価した.c)安全性: ADA投与8週後までに報告された有害事象について評価した.【結果】対象の背景は性別(男:女)22:16,ADA投与時年齢36.4(歳)±11.7 (14~62),罹病期間16.0(年)±10.1(0.2~36.4),病型:小腸型4例(10.5%):大腸型5例(13.2%):小腸大腸型29例(76.3%),ストーマ:あり10例(26.3%)であった.主なADAの投与目的は腸管病変増悪30例と最も多く,次いでIFX効果減弱(二次無効)18例,IFX副作用(不耐)5例であり, IFXからのスイッチ例は23例60.5%であった.a) CDAI算出可能例(n=28):ADA投与前の平均CDAI値は235.6,4週で122.3(p<0.05),8週129.5(p<0.05)であり,投与前と比較しCDAI値は有意に減少した。また,ADA投与後4週での寛解率は66.7%,有効率は83.3%,8週では寛解率は60.0%,有効率は85.0%であった.b)ストーマ例(n=10): 4週で著効40%,有効が60%,8週で著効30%,有効は70%であった.c)安全性:浮腫6例(15.8%)が最も多く、次いで穿刺部発赤を5例(13.1%)に認めた.8週までにADAを中止したのは1例(2.6%)であった.IFX不耐例に対しても安全に投与することが可能であった.【結論】ADA療法は短期的には約2/3の症例が寛解導入することに成功した.短期的には重篤な副作用は認めなかった.ADAはCDに対し有効な治療法の一つである。既存の治療法とCD個々の病勢に合わせて使用していくことが望まれる.
索引用語 クローン病, アダリムマブ