セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専82:

壊疽性膿皮症に対してもタクロリムスが著効したステロイド抵抗性潰瘍性大腸炎

演者 城谷 麻衣子(長崎大学病院 消化器内科)
共同演者 南 ひとみ(長崎大学病院 消化器内科), 松島 加代子(長崎大学病院 消化器内科), 赤澤 祐子(長崎大学病院 消化器内科), 塩澤 健(長崎大学病院 消化器内科), 山口 直之(長崎大学病院 消化器内科), 大仁田 賢(長崎大学病院 消化器内科), 磯本 一(長崎大学病院 消化器内科), 竹島 史直(長崎大学病院 消化器内科), 宿輪 三郎(特定医療法人 三佼会 宮崎病院), 中尾 一彦(長崎大学病院 消化器内科), 吉崎 麻子(長崎大学病院 皮膚・アレルギー科), 清水 和弘(長崎大学病院 皮膚・アレルギー科)
抄録 【目的】壊疽性膿皮症は、原因不明の慢性皮膚潰瘍性疾患で、潰瘍性大腸炎との合併率は1~5%と報告されている。その活動性は炎症性腸疾患の増悪に伴うことが多いが、活動性と関係なく生じることもある。中等症以下ではステロイドの全身投与が有効である症例が多いが、重症例では難治性皮膚潰瘍を形成する症例も多い。タクロリムスは炎症性腸疾患の増悪に強く関与するT細胞活性を特異的に阻害する免疫調節薬であり、難治性潰瘍性大腸炎に対して有効性が認められている。今回我々はステロイド抵抗性・依存性潰瘍性大腸炎に難治性の壊疽性膿皮症を合併し、タクロリムス内服および外用併用にて皮膚症状および腹部症状に奏功した症例を経験したため報告する。【症例】症例は34歳男性。2008年11月潰瘍性大腸炎と診断され、ステロイド内服にて寛解導入されたが、離脱困難、再燃・寛解を繰り返していた。2011年4月、PSL3mg/日内服にて経過観察中に顕血便・発熱・腹痛の増悪を認め、同時期より下肢の疼痛・発赤を伴う硬結が認められ徐々に潰瘍化し、潰瘍性大腸炎再燃および壊疽性膿皮症の合併と診断された。ステロイド全身投与や抗生剤投与を行うも消化器症状・皮膚症状ともに改善せず、タクロリムス内服およびタクロリムス軟膏による処置を開始した。タクロリムスは血中濃度を10-15ng/mlに保つよう調整し、初期にはスルファジアジン銀軟膏、約1週間後よりステロイド軟膏・タクロリムス軟膏を使用して処置を継続した結果、上下肢の潰瘍は徐々に縮小し約2週間後には上皮化を認めた。現在タクロリムス内服継続にて壊疽性膿皮症の治癒傾向は維持され、潰瘍性大腸炎も寛解維持されている。【考察】タクロリムス内服および外用併用により、壊疽性膿皮症の潰瘍改善と潰瘍性大腸炎の寛解導入が可能であった。腸管外合併症の中でも患者のQOLに深くかかわる可能性の高い壊疽性膿皮症の治療において、ステロイド抵抗性を示す重症型に対してはタクロリムスが有効なことがあり、早期の使用によって不要なステロイド投与を避けられる可能性が示唆された。
索引用語 壊疽性膿皮症, タクロリムス