セッション情報 一般演題

タイトル 077:

治療前より肝障害があり治療開始後に増悪したため肝生検を施行したバセドウ病の1症例

演者 松本 修一(福岡徳洲会病院 肝臓内科)
共同演者 西川 晃子(福岡徳洲会病院 肝臓内科), 滝沢 直歩(福岡徳洲会病院 総合内科), 蒲池 直紀(福岡徳洲会病院 総合内科), 松林 直(福岡徳洲会病院 心療内科)
抄録 【症例】29歳女性.特記すべき既往歴なし.1週間前より持続する発熱と動悸のため当院を受診した.初診時,体温は36.9℃で脈拍128/分(整)と頻脈を認めた.身体学的には甲状腺のびまん性腫大を認めるも他に特記すべき異常所見は認めなかった.採血では,TSH<0.01μIU/ml,FT4 6.92ng/dlであり,甲状腺シンチグラムにて甲状腺へ取り込みの亢進を認めた.また,ALT75IU/l,ALP243IU/lと肝細胞障害型肝障害を認めた.IgM-HA抗体陰性,HBs抗原陰性,HCV抗体低力価陽性,HCV-RNA陰性であった.EBV,CMVは既感染パターンであった.【経過】バセトウ病としてthiamazole(MMI)60mg/dayにて治療開始した. 約20日後にはfree T4値は低下傾向となるもGPT値はさらに上昇し,455IU/lとなった. MMIを中止し,propylthiouracil(PTU)150mg/dayの内服に変更するもGPT値はさらに上昇し,GPT500IU/lまで上昇したため肝障害の原因精査のため肝生検を施行した.肝生検の結果,組織学的には軽度のうっ血を認めるのみで,肝細胞壊死や胆汁うっ滞の所見は認めなかった. PTUの内服は続行し経過観察したところGPT値は約3カ月の経過で正常化した.【考察】バセドウ病患者では未治療の状態でも肝機能障害を認めることがあり,抗甲状腺薬による治療介入早期にGPT150IU/L程度の上昇を認めるも自然経過にて正常化する例があるとされており,抗甲状腺薬による薬物性肝障害ではないとされている.本症例ではMMIによる治療開始後にALT500 IU/lと著明な肝障害を認めたため薬物性肝障害を疑うも肝生検を行うことで薬物性肝障害は考えにくく抗甲状腺薬の続行が可能となった.また,自己免疫性肝炎などの他の肝炎を否定する上でも肝生検は有用であると考えられた.
索引用語 バセドウ病, 肝障害