セッション情報 ワークショップ4「進行肝細胞癌の治療戦略」

タイトル WS4-07:

進行肝細胞癌治療における分子標的薬と肝持続動注化学療法の比較検討

演者 森  哲(大分大学総合内科学第一)
共同演者 高橋 祐幸(大分循環器病院消化器内科), 織部 淳哉(大分大学医学部消化器内科), 本田 浩一(大分大学医学部消化器内科), 首藤 能弘(大分循環器病院消化器内科), 山下 勉(大分大学総合内科学第一), 清家 正隆(大分大学総合内科学第一), 吉松 博信(大分大学総合内科学第一)
抄録 【目的】当科で経験したソラフェニブ使用症例および肝持続動注化学療法症例(肝動注) について検討し両者の選択基準を検討したので報告する. 【対象・方法】ソラフェニブは2009年8月~2010年6月に投与した26症例.男性25例,女性1例.平均年齢67.2歳.肝動注は1998年3月~2010年7月に施行した115例.男性89例,女性26例.平均年齢67.9歳.検討項目:1) ソラフェニブ症例と肝動注症例の背景,治療効果,中止率,中止理由,予後を比較する.2)肝動注の選択基準を,動注前の各種因子,動注開始後1カ月後のAFP,PIVKA-II,腫瘍濃染の減少および腫瘍縮小効果などより検討する.【結果】1)ソラフェニブ症例は遠隔転移例が多かった(p<0.0001).ソラフェニブ症例と肝動注症例の判定可能であった症例の治療効果(CR+PR/SD+PD)はそれぞれ1/25と38/77であった(p=0.0025).ソラフェニブ26例中21例(80.8%),肝動注115例中38例(33.0%)の減量または中止が必要であった(p=0.0110).ソラフェニブ中止理由は皮膚症状が最も多く,ついで消化器症状であった.ソラフェニブ症例と肝動注症例予後は肝動注症例の方が良好であった(p=0.0438).MSTはソラフェニブ症例242日,肝動注症例371日.StageIV-Bでは差がなかった(p=0.1403).2)肝動注症例では腫瘍濃染の減少および腫瘍縮小効果がPR以上,動注開始1カ月後のPIVKA-IIが100以上低下を示す症例は予後がそれ以外に比べて有意に予後が良好で,治療前の腫瘍径50mm以上は予後不良であった. 【考察】肝動注には長期予後が得られる症例が存在する.そこで検討した結果,肝動注症例では腫瘍濃染の減少および腫瘍縮小効果がPR以上,動注開始1カ月後のPIVKA-IIが100以上低下を示す症例は予後がそれ以外に比べて有意に予後が良好で,治療前の腫瘍径50mm以上は予後不良であった. ソラフェニブ症例は中止例が多いが,なかには明らかな腫瘍の縮小効果を示す症例や長期投与が可能な症例も存在した.【結語】それぞれの治療の特徴と限界を考慮することにより、治療の質的向上が得られる可能性が示唆された.
索引用語 進行肝癌, 動注化学療法