セッション情報 一般演題

タイトル 103:

肝内胆管癌によるpulmonary tumor thrombotic microangiopathy(PTTM)の1剖検例

演者 塩屋 公孝(済生会熊本病院 消化器病センター)
共同演者 糸島 尚(済生会熊本病院 消化器病センター), 杉原 一明(済生会熊本病院 消化器病センター), 門野 義弘(済生会熊本病院 消化器病センター), 上川 健太郎(済生会熊本病院 消化器病センター), 工藤 康一(済生会熊本病院 消化器病センター), 浦田 淳資(済生会熊本病院 消化器病センター), 近澤 秀人(済生会熊本病院 消化器病センター), 今村 治男(済生会熊本病院 消化器病センター), 多田 修治(済生会熊本病院 消化器病センター), 神尾 多喜浩(同 病理部)
抄録 症例は64歳、女性。約1ヵ月前から右季肋部痛、全身倦怠感、労作時呼吸困難感が出現していた。次第に呼吸困難感が増悪したので、当院を受診した。酸素2リットル/分(経鼻)投与でSpO2 94%の低酸素血症を認め、精査・加療目的のため入院となった。胸部CTでは両肺野に散在する小結節影と軽度のすりガラス陰影を認めた。一方、腹部造影CT検査では肝右葉が著明に腫大し、肝右葉枝の門脈は造影されず、同区域の肝実質の造影効果も弱く、門脈血栓症あるいは腫瘍塞栓による肝右葉梗塞が疑われた。鑑別として、びまん性発育型の腫瘍も考えられたが、造影CT、エコー検査ともに明らかな腫瘍性病変を指摘できなかった。入院後、DIC、門脈血栓症に対する抗凝固療法主体の治療を行うとともに、肝腫瘍の存在診断について精査を進めようとした。しかし、急速な全身状態の悪化、特に低酸素血症、黄疸の増悪、全身倦怠感が顕著になり、塩酸モルヒネの持続皮下注療法による緩和治療を余儀なくされ、入院16日目に永眠された。剖検では肝右葉にびまん性に拡がる肝内胆管癌を認めた。両肺には小動脈内に多数の腫瘍塞栓を認め、ときにフィブリン血栓、器質化を伴った血栓がみられ、一部の小動脈内膜には限局性の線維性肥厚を認めた。肺の所見は、pulmonary tumor thrombotic microangiopathy(PTTM)と診断された。腫瘍病変が疑われ、低酸素血症を呈する症例においては、PTTMも鑑別に挙げて考慮すべきである。悪性腫瘍によるPTTMに関する報告は散見されるものの、いまだに確立された治療法はなく、予後は極めて不良である。今回、我々は肝内胆管癌によるPTTMの1剖検例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。
索引用語 pulmonary tumor thrombotic microangiopathy, 肝内胆管癌