セッション情報 一般演題

タイトル 158:

HTLV-Iキャリアに発症した胆嚢結核症の1例

演者 馬渕 仁志(那覇市立病院)
共同演者 宮里 賢(那覇市立病院), 圓若 修一(那覇市立病院), 金城 譲(那覇市立病院), 仲地 紀哉(那覇市立病院), 豊見山 良作(那覇市立病院), 島尻 博人(那覇市立病院), 友利 寛文(那覇市立病院), 新垣 有正(那覇市立病院)
抄録 【はじめに】胆嚢結核症は極めてまれな疾患である。今回我々はHTLV-Iキャリアで診断に苦慮し、胆嚢摘出術を行い病理組織学的に胆嚢結核症と診断した一例を経験した。【症例】69歳男性。高血圧症、甲状腺機能低下症、脳出血後遺症、肺結核症で治療歴あり。発熱を主訴に当院受診し精査目的に入院。理学所見上、両手掌に多発する紅斑を認めた。検査所見では、炎症反応と肝機能異常を認めHTLV-I抗体及びクオンテイフェロンが陽性であった。腹部造影CT検査では胆嚢頚部が不整で体部の壁肥厚及び胆嚢窩付近の肝内に膿瘍を疑わせる所見があり、肝門部及び膵頭部周囲のリンパ節腫大も認めた。Gaシンチでは胆嚢を中心とした集積があり、上部内視鏡では十二指腸潰瘍を認めた。肝臓や皮膚、十二指腸から生検施行したが、非特異的なリンパ球浸潤のみで診断に至らず。画像所見の悪化を認め診断目的に胆嚢摘出術及びリンパ節生検を行った。組織学的には、リンパ球浸潤に加えて筋層から漿膜下にかけて乾酪壊死を伴う肉芽腫を認めた。摘出したリンパ節においても同様な肉芽腫を認め、抗酸菌染色や培養は陰性であったが結核菌のrRNA陽性より胆嚢結核症と診断した。術後に多剤併用の抗結核療法を開始し、発熱や画像所見の改善を認めた。【考察】胆嚢結核はきわめてまれで、症状や所見も特異的なものがなく診断は非常に困難である。これまでの報告では胆嚢炎、胆嚢癌として胆嚢摘出術を受け病理組織診断で胆嚢結核症と診断されることも多く画像検査や培養で結核菌は証明されず診断に苦慮した。また入院経過においてHTLV-Iキャリアと診断し、DNAレベルではHTLV-Iのポリクローナルな増殖を認めた。そのような場合、免疫不全を合併することもあるとされており胆嚢結核とHTLV-Iとの関与も示唆された。【結論】結核症の既往のある症例で壁肥厚を伴った胆嚢病変を指摘された場合、胆嚢結核の可能性を考慮し診断と治療をすすめる必要がある。今回はが結核のリHTLV-Iスクになった可能性があり、遺伝子レベルではウィルスの増殖を認めていることから今後ATL発症に対しても注意深い経過観察が必要と思われた。
索引用語 胆嚢結核, HTLV-Iキャリア