セッション情報 ワークショップ4「進行肝細胞癌の治療戦略」

タイトル WS4-09:

Vp3以上の門脈腫瘍栓を伴う進行肝細胞癌に対する外科切除の成績と長期生存に関わる因子の検討

演者 萱島 寛人(九州大学 消化器・総合外科)
共同演者 的野 る美(九州大学 消化器・総合外科), 吉屋 匠平(九州大学 消化器・総合外科), 武藤 純(九州大学 消化器・総合外科), 本村 貴志(九州大学 消化器・総合外科), 間野 洋平(九州大学 消化器・総合外科), 戸島 剛男(九州大学 消化器・総合外科), 森田 和豊(九州大学 消化器・総合外科), 橋本 直隆(九州大学 消化器・総合外科), 増田 稔郎(九州大学 消化器・総合外科), 池上 徹(九州大学 消化器・総合外科), 吉住 朋晴(九州大学 消化器・総合外科), 武冨 紹信(九州大学 消化器・総合外科), 調 憲(九州大学 消化器・総合外科), 前原 喜彦(九州大学 消化器・総合外科)
抄録 【背景】高度な門脈腫瘍栓を伴う進行肝細胞癌の予後は不良である。外科切除症例の5年生存率は不良と報告されているが、少数ながらも5年以上の長期生存例を認めることも事実である。【目的】門脈一次分枝以上の腫瘍栓(Vp3及びVp4)を伴う進行肝細胞癌に対する外科切除の成績を検討し、5年以上の長期生存例を解析して、長期生存に関わる因子を明らかにする。【方法】1985年4月から2005年12月までに当科において施行された初発肝細胞癌切除症例692例のうち、Vp3以上の門脈腫瘍塞栓を伴う29例を対象とした。5年以上の長期生存例5例を長期生存群、5年以内の死亡例24例を短期生存群とし、2群間の比較検討を行った。【結果】1.外科切除の成績:全29例の1/3/5年生存率は、62/24/17%であった。その中で根治切除を施行できたのは19例であり、その1/3/5年生存率は、73/37/26%であった。2.長期生存に関わる因子:長期生存群では短期生存群と比較して、術前AST値が有意に低く(36 vs 65 IU/L、P=0.037)、術前PIVKA-II値が有意に低値であった(1210 vs 4240 mAU/ml、P=0.005)。根治切除19例で比較すると、術後再発を認めたものは、長期生存群で4例(80%)、短期生存群では全14例(100%)であった。長期生存群の再発例は遠隔転移巣(肺、骨)も含めて再発個数が4個以下であり、切除やRFAといった局所療法が可能な症例であった。一方、短期生存群で再発個数が4個以下の症例は3例(21%)のみであった(P=0.011)。【まとめ】高度な門脈腫瘍栓を伴う進行肝細胞癌切除後の長期生存に関わる因子としては術前AST値、術前PIVKA-II値、術後再発個数(4個以下)が関係していた。4個以下の再発(遠隔転移も含む)であれば、長期生存が得られる症例が存在することから、積極的に切除やRFAといった局所療法を行う適応があると考えられる。
索引用語 肝細胞癌, 門脈腫瘍栓