セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専14:

Sorafenib投与開始直後はPDであったが、4ヶ月以後に著明な抗腫瘍効果を認めた肝細胞癌の1例

演者 大江 晋司(産業医科大学第3内科)
共同演者 柴田 道彦(産業医科大学第3内科), 松橋 亨(産業医科大学第3内科), 日浦 政明(産業医科大学第3内科), 阿部 慎太郎(産業医科大学第3内科), 田原 章成(産業医科大学若松病院消化器内科), 原田 大(産業医科大学第3内科)
抄録 症例は79歳、女性。近医にC型肝硬変にて通院中、2009年5月に肝細胞癌を指摘され、肝動脈化学塞栓療法を繰り返されていた。2010年6月に多発する肝細胞癌再発を認め、当科へ紹介となった。同年8月と9月に本人の希望によりミリプラチン水和物とリピオドールを用いた肝動注化学療法を施行するも、肝細胞癌の進行を認めた。腫瘍マーカーはAFP 15303.0 ng/mL、PIVKA-II 347 mAU/mL、肝予備能はChild-Pugh A (5点)と良好であったためsorafenib 800 mg/dayを開始したが、投与開始1週間後に強い筋肉痛を認め400 mg/dayに減量した。AFP、PIVKA-IIは、投与3ヶ月後まで増加傾向を示し、また投与2ヶ月後のCT検査では、肝細胞癌の増大と多数の新病変の出現を認めPDと判断した。以後も400 mg/dayでの加療を継続していたが、grade 2の手足症候群を認めたため、投与2.5ヶ月後より200 mg/dayへと減量した。投与4ヶ月後にAFP、PIVKA-IIともに減少し、造影CT検査では、肝両葉の腫瘍の著明な縮小、消失を認め、RECIST基準にてPRと判断した。その後grade 1~2の手足症候群を認めるが、200 mg/dayでの内服加療を継続し、その他有害事象なく経過した。投与8ヶ月後の造影CT検査では、さらに腫瘍は縮小、消失し、ほぼCRに近い状態となり、腫瘍マーカーも減少傾向にある。従来、肝細胞癌に対する治療効果判定は2-3ヶ月後が一般的であり、PDであった場合には、他治療への変更が検討される。本例も3ヶ月後までPDであったが、継続したところ4ヶ月後に急激な抗腫瘍効果を認めた。また200 mg/dayの少量にて効果が持続し、modified RECISTではなくRECIST基準にて、ほぼCRに近い状態まで改善している。Sorafenibはlong SDを目指す薬剤と位置付けられているが、我が国ではCR症例も散見されており、その至適投与量、治療効果判定時期等を検討するうえで貴重な症例であり報告する。
索引用語 肝細胞癌, Sorafenib