抄録 |
整容性に優れた単孔式内視鏡下手術 (TANKO) は、急速に普及しつつある。しかし、肝嚢胞など肝疾患を対象にTANKOが行われた報告は未だ少数である。当科で経験した単孔式腹腔鏡下肝嚢胞開窓術の2例を報告する。症例1は60歳、女性。3年前に腹部膨満感を主訴に他院受診。CTで肝嚢胞を指摘されるも放置していたが、腹部膨満感が徐々に悪化してきたため、当科受診。CT等で肝右葉に16 cmの巨大肝嚢胞を指摘。単孔式腹腔鏡下肝嚢胞開窓術を施行した。症例2は81歳、男性。上腹部痛を主訴に他院受診し、CTで肝右葉に12 cmの肝嚢胞を指摘され、増大傾向あるため当科紹介受診。同様に単孔式腹腔鏡下肝嚢胞開窓術を施行した。両症例とも臍部に2.5 cmの縦切開を置き、マルチプルトロッカー法でフレキシブルスコープを使用した。術中所見では両症例とも肝S4-8に菲薄化した嚢胞壁を認めたため、術中超音波検査で確認後、嚢胞壁を穿刺、漿液性内容液を吸引した。バイポーラデバイスを用いて嚢胞壁を切開し、回収。肝臓側嚢胞壁をアルゴンレーザーで焼却。臍部創からペンローズドレーンを留置し、手術を終了した。手術時間は70分、75分、出血量はともに少量であった。術後経過は良好で術後5日目に退院となった。腹腔鏡下肝嚢胞開窓術は、単孔式手術の良い適応のひとつであると考えられた。 |