セッション情報 | シンポジウム2「慢性肝炎治療の現況」 |
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タイトル | S2-11:自己免疫性肝炎に対する治療 -コルチコステロイド治療の有無による検討- |
演者 | 有永 照子(久留米大学消化器内科) |
共同演者 | 井出 達也(久留米大学消化器内科), 宮島 一郎(久留米大学消化器内科), 緒方 啓(久留米大学消化器内科), 桑原 礼一郎(久留米大学消化器内科), 古賀 郁利子(久留米大学消化器内科), 鳥村 拓司(久留米大学消化器内科), 神代 龍吉(久留米大学消化器内科), 佐田 通夫(久留米大学消化器内科) |
抄録 | 【目的】自己免疫性肝炎(AIH)はコルチコステロイド(CS)による治療が標準的な治療である。最近のAIHは高齢化や急性肝炎様発症などが目立ち、治療の選択に苦慮することも少なくない。そこで、今回AIHに対する治療を調査し、CS治療群(CS群)とCS治療をしなかった群(non-CS群)の背景と転帰を比較検討した。 【対象と方法】当科及び関連病院のAIH 193例を対象とした。平均年齢は57.3歳(15-88歳),F:M=170:23,平均観察期間は82.1か月。肝硬変症例は34(17.6%),PBC合併例は16(8.2%)であった。診断時のAIH score, TB値, ALT値,IgG値,PT(%),血小板数,BMI,肝硬変や糖尿病の有無,合併症,発症様式,転帰を調査し,CS治療の有無により比較検討した。 【成績】non-CS群は36例(18.7%)。治療の内訳はUDCAが28例でその中にSNMC治療が7例含まれていた。アザチオプリン3例,無治療例も5例あった。non-CS群とCS群を比較すると,non-CS群はAIH score(13.6±3.2 vs 15.6±2.9;p=0.0006),TB値(1.5±1.4 vs 4.6±6.0;p=0.0013),ALT値(252.6±419.5 vs 450.8±507.6;p=0.0007),IgG値(2319.6±531.7 vs 2932.9±1091.4; p=0.0005)がいずれも有意に低かった。一方,PT(%)(85.0±14.5 vs 74.0±18.9;p=0.0114),慢性発症の割合(69.4% vs 40.1%;p=0.0014)は有意に高かった。年齢は高い傾向を認めた(60.9±14.1 vs 56.5±15.1;p=0.094)。肝硬変や糖尿病, 慢性甲状腺炎などの合併症には有意差を認めなかった。 転帰:non-CS群は3例(8.3%)が死亡。死因は肝細胞癌2例,肝不全1例であった。一方、CS群を有効群と無効群に区分すると,有効群(141例)では5例(3.5%)が死亡。死因は感染症4例,くも膜下出血1例であった。無効群(16例)では7例(43.8%)が死亡。死因は肝不全4例,肝細胞癌 1例,感染症1例,消化管出血1例であった。non-CS群とCS群,non-CS群とCS有効群の生存率を比較したが有意差はなく予後は変わらなかった。 【結論】CS治療をしない症例は2割近くあり,AIH scoreや炎症の程度が軽い症例を選択し病勢をコントロールできればCS治療と予後は変わらず良好であった。 |
索引用語 | 自己免疫性肝炎, コルチコステロイド治療 |