セッション情報 | 研修医発表(卒後2年迄) |
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タイトル | 研47:電解質喪失症候群に伴う脱力発作で発見された直腸絨毛腫瘍の1例 |
演者 | 高木 勇人(公立学校共済組合九州中央病院臨床研修医) |
共同演者 | 檜沢 一興(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 工藤 哲司(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 貫 陽一郎(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 畑田 鉄平(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 平田 敬(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 長谷川 博文(公立学校共済組合九州中央病院外科), 中守 真理(公立学校共済組合九州中央病院病理), 松本 主之(九州大学大学院病態機能内科学), 飯田 三雄(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科) |
抄録 | 絨毛腫瘍は絨毛成分が多いほど巨大水平発育し、多中心性に境界不明瞭な癌を合併する特徴がある.1954年McKittrickは多量の粘液性下痢により電解質喪失症候群(Electrolyte Depletion Syndrome: EDS)を合併した絨毛腫瘍を報告した.我々はEDSによる脱力発作で発見された直腸絨毛腫瘍を経験したので報告する.症例は66歳、男性.2年前から下痢が出現し、数日前から脱力発作が出現していた.夕食後入浴中に倒れて動けなくなり当院へ救急搬送された.搬入時は意識清明で脳神経症状を認めなった.検査所見にて総蛋白7.3g/dL、アルブミン4.6g/dL、 Na123mEq/L、K1.7mEq/L、Cl64mEq/Lと著明な電解質喪失を認め、周期性四肢麻痺を疑い入院となった.しかし甲状腺ホルモンに異常なく、腹部骨盤部CTにて直腸に腫瘤を認めた.大腸内視鏡検査を施行した結果、肛門直上から全周性の巨大な隆起性病変を確認した.病変は著明な粘液に覆われていたがNBI観察により表面の絨毛模様が明瞭に透見観察された.あきらかな潰瘍形成や粗大不整隆起はなく、生検でもGroup3の診断であった.注腸X線検査にて病変は粘液豊富な10cmを超える腫瘤であり、EDSを伴う下部直腸絨毛腫瘍の診断で手術を行なった.病変は12×11cmに及ぶ表面細顆粒状の広基性隆起で、組織学的には高度異型の管状絨毛腺腫内に粘膜内の高分化腺癌を認めた.脈管侵襲やリンパ節転移はなく、術後は電解質異常も改善し退院となった.2009年八杉ら(日消誌 2009:106;377)の集計では、本邦で報告されたEDS合併大腸絨毛腫瘍は63例であった.発見時年齢は平均68歳で90%以上に下痢が出現し、病悩期間は平均40ヵ月と長く、90%は直腸に発生していた.腫瘍径は平均14cmと大きく、70%は癌を合併していたが早期癌が60%を占め、発育は緩徐で予後は良好であった.本例は脱力発作で救急搬入されたが、電解質異常を呈する消化器疾患として教訓的な症例と考え報告する. |
索引用語 | 絨毛腫瘍, 電解質喪失 |