セッション情報 | 専修医発表(卒後3-5年迄) |
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タイトル | 専35:癌の成分が殆ど露出せず、診断に苦慮した粘膜下腫瘍様胃癌の一例 |
演者 | 遠藤 翔(九州大学病院臨床腫瘍外科) |
共同演者 | 永井 英司(九州大学病院臨床腫瘍外科), 大内田 研宙(九州大学病院臨床腫瘍外科), 前山 良(九州大学病院臨床腫瘍外科), 上田 純二(九州大学病院臨床腫瘍外科), 相島 慎一(九州大学病院形態機能病理学), 清水 周次(九州大学病院臨床腫瘍外科), 田中 雅夫(九州大学病院臨床腫瘍外科) |
抄録 | はじめに上部消化管内視鏡検査はその機能の発展や普及により、今日のがん検診において中心的な検査となってきている。しかしながら、稀に診断に難渋する例,肉眼的には悪性が疑われるが生検では悪性所見を認めない例を経験することがある。今回、前庭部の中心に陥凹を伴う隆起性病変に対して、約2年間の密な経過観察にもかかわらず、悪性所見は認めなかったが、手術を施行し胃癌の診断に至った例を経験したので報告する。症例70歳台男性。心窩部痛を主訴に上部消化管内視鏡検査を施行され、前庭部に中心に陥凹を伴う隆起性病変を認めた。生検ではGroup1であり、EUSで第2層を中心に均一な低エコー像を認めたため、粘膜下腫瘍が疑われた。3ヶ月毎に上部消化管内視鏡検査が約2年にわたり行われたが、明らかな増大傾向はなく、生検でもGroup1-2であった。肉眼的には悪性の可能性も否定できず、精査加療目的に当科紹介となった。当科での生検でも悪性所見は認めなかったが、肉眼的所見,PET所見から悪性が疑われ、本人と相談の上手術を行うこととなった。胃癌に準じて腹腔鏡下幽門側胃切除術,D2リンパ節郭清を施行した。切除標本の術中迅速病理組織診断を提出したところ、腺癌の診断であった。最終病理診断は高~中分化型腺癌で、漿膜下層までの浸潤であった。幽門下リンパ節に1個のリンパ節転移を認めた。現在外来でS-1内服中である。病理組織学的には腫瘍は正常粘膜あるいは過形成性粘膜に覆われ、癌の成分の露出は殆ど認められなかった。まとめ生検では悪性所見は認めなかったが、肉眼的所見・PET所見に基づき手術を施行し、胃癌の診断に至った例を経験した。生検で悪性所見が認められなくても、経験豊富な内視鏡医の肉眼所見で悪性の可能性が否定できない例では、診断と治療に充分な注意を払うことが重要であると考えられる。 |
索引用語 | 胃癌, 生検 |