セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専11:

続発性ヘモクロマトーシスに合併した肝細胞癌の一例

演者 戸次 鎮宗(国立病院機構長崎医療センター肝臓内科)
共同演者 阿比留 正剛(国立病院機構長崎医療センター肝臓内科DELIMITER国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター), 夏田 孔史(国立病院機構長崎医療センター外科), 蒲原 行雄(国立病院機構長崎医療センター臨床研究センターDELIMITER国立病院機構長崎医療センター外科), 福島 真典(国立病院機構長崎医療センター肝臓内科), 安永 有希(国立病院機構長崎医療センター肝臓内科), 橋元 悟(国立病院機構長崎医療センター肝臓内科), はい 成寛(国立病院機構長崎医療センター肝臓内科), 大谷 正史(国立病院機構長崎医療センター肝臓内科), 佐伯 哲(国立病院機構長崎医療センター肝臓内科), 長岡 進矢(国立病院機構長崎医療センター肝臓内科DELIMITER国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター), 小森 敦正(国立病院機構長崎医療センター肝臓内科DELIMITER国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター), 成毛 有紀(国立病院機構長崎医療センター臨床検査科病理), 伊東 正博(国立病院機構長崎医療センター臨床研究センターDELIMITER国立病院機構長崎医療センター臨床検査科病理), 藤岡 ひかる(国立病院機構長崎医療センター臨床研究センターDELIMITER国立病院機構長崎医療センター外科), 山西 幹夫(長崎県島原病院), 右田 清志(国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター), 八橋 弘(国立病院機構長崎医療センター肝臓内科DELIMITER国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター), 石橋 大海(国立病院機構長崎医療センター肝臓内科DELIMITER国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター)
抄録 症例は80歳、男性。主訴は肝腫瘍の精査。既往歴として65歳、79歳時に早期胃癌の診断を受け、内視鏡治療を2度受けている。これまで肝障害を指摘されたことはなく、4年前に骨髄異形成症候群と診断され、以後貧血に対し繰り返し赤血球輸血が行われていた。1年3か月前に造影CTで16mm大の肝腫瘍を指摘され、肝血管腫として経過観察されていた。2か月前の造影CTで肝腫瘍は34mm大と増大し、辺縁は早期相で濃染、後期相でwash outを認め肝細胞癌が疑われた。当院を紹介され、採血所見では肝酵素上昇や肝予備能低下はなく、HBs抗原、HCV抗体は陰性で、HBc抗体は低力価陽性、腫瘍マーカーはAFP 2ng/ml, PIVKA-2 21mAU/mlといずれも正常範囲内であった。またHbは7.4g/dlと低値、フェリチンは972mg/dlと高値であった。EOB-MRIでは、肝腫瘍は造影効果が持続する傾向があり肝細胞癌としては非典型的な所見であった。また背景肝は形態的な変化は認めなかったが脾臓と共に鉄沈着が疑われる所見であり、病歴から続発性ヘモクロマトーシスが疑われた。診断確定のため行った腫瘍および肝の生検では、肝腫瘍は中分化型肝細胞癌、背景肝はヘモジデローシスの診断であった。背景肝に炎症や線維化の所見は認めなかった。外科的切除の適応と判断し、当院外科で肝亜区域切除術を施行した。切除標本の病理組織診断では、腫瘍は術前診断と同様に肝細胞癌の所見であり、背景肝の鉄沈着は高度であった。以上より続発性ヘモクロマトーシスに合併した肝細胞癌と診断した。現在術後11か月経過した現在、無再発で生存中である。欧米では遺伝性ヘモクロマトーシスは肝細胞癌の原因の1つであるが、本邦では遺伝性ヘモクロマトーシスは少数であり続発性ヘモクロマトーシスを含めても肝細胞癌の報告は少ない。非硬変肝からの発癌はさらにまれである。一方鉄沈着は肝細胞癌の発癌の危険因子として知られており、近年増加している非B非C型肝細胞癌の発癌機構においても鉄沈着の重要性が指摘されている。このような点で本症例は示唆に富む症例と考え、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 肝細胞癌, ヘモクロマトーシス