セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専27:

保存的治療で軽快した胸腔内穿破型特発性食道破裂の一例

演者 保利 喜史(社会保険 小倉記念病院)
共同演者 吉田  智治(社会保険 小倉記念病院)
抄録 【はじめに】胸腔内穿破型食道破裂は、保存的治療の適応は無く、外科的治療を施行しなければ救命は難しいとされているが、今回、保存的治療により軽快した胸腔内穿破型食道破裂を経験したので、文献的考察を加えて報告する。【症例】 78歳男性。嘔吐後の胸痛を主訴に前医を受診し、精査の結果、特発性食道破裂と診断された。炎症は縦隔内に限局しており、絶食、経鼻胃管による減圧、抗生剤投与による保存的治療が選択された。その後炎症が左胸腔内へ穿破し、胸腔ドレーンが留置され、待機的に手術予定であった。しかし、中心静脈カテーテル留置による感染性血栓を左内頸静脈に認め、精査加療目的に当科転院となった。来院時バイタルは安定しており、左上肢の浮腫以外、特記すべき身体所見、訴えは認めなかった。血液検査上は、炎症反応高値、胆汁鬱滞型の肝障害を認めるものの、血小板減少、DICは認めなかった。当科来院時CTでは、左膿胸を認め、胸腔ドレーンからは一日に100~200mlの浮遊物を伴う膿汁が排出されていた。治療経過であるが、抗生剤、絶飲食、胸腔ドレナージによる保存的治療を継続し、感染をコントロールの後、外科手術を予定していたが、術前に右肺気胸を発症し、右胸腔にも胸腔ドレーンを留置した。また、持続する低アルブミン血症に対して、アルブミン輸注後うっ血性心不全を発症し、血管拡張薬、利尿薬、カテコラミンによる治療を開始した。持続する低アルブミン血症に対し、尿蛋白を調べたところ5.6g/dayと著名な高尿蛋白を認め、ネフローゼ症候群と診断した。その後、右肺気胸は軽快し、胸腔ドレーンを抜去した。心不全も集中治療により軽快し、少量の利尿薬内服でコントロール可能となった。ネフローゼ症候群に関してであるが、全身状態の回復とともに尿蛋白も減少し、腎機能も血清Cre3.2mg/dlで落ち着き、慢性腎不全保存期の治療を継続中である。当科入院から第51病日、食道透視を施行し、下部食道左壁の瘻孔の閉鎖を確認した。その後経口摂取可能となり、第58病日に軽快退院となった。
索引用語 特発性食道破裂, 保存的治療