| 共同演者 |
山路 卓巳（宮崎大学内科学講座消化器血液学分野）, 山本 章二朗（宮崎大学内科学講座消化器血液学分野）, 平田 昌子（宮崎大学内科学講座消化器血液学分野）, 竹田 幸子（宮崎大学内科学講座消化器血液学分野）, 大園 芳範（宮崎大学内科学講座消化器血液学分野）, 日高 舞（宮崎大学内科学講座消化器血液学分野）, 夏田 朱一郎（県立病院内科消化器部門）, 橋本 神奈（宮崎大学内科学講座消化器血液学分野）, 中村 憲一（宮崎大学内科学講座消化器血液学分野）, 安倍 弘生（宮崎大学内科学講座消化器血液学分野）, 三池 忠（宮崎大学内科学講座消化器血液学分野）, 楠元 寿典（宮崎大学内科学講座消化器血液学分野）, 岩切 久芳（宮崎大学内科学講座消化器血液学分野）, 田原 良博（県立病院内科消化器部門）, 蓮池 悟（宮崎大学内科学講座消化器血液学分野）, 永田 賢治（宮崎大学内科学講座消化器血液学分野）, 下田 和哉（宮崎大学内科学講座消化器血液学分野） |
| 抄録 |
症例は51歳、女性。既往歴、生活歴に特記事項はなかった。腹痛を主訴に近医を受診し、CTで上行結腸壁の肥厚、腹腔内リンパ節の著明な腫大を指摘され、当科紹介となった。大腸内視鏡検査では上行結腸に全周性隆起性病変を認め、生検標本の病理診断で低分化腺癌であった。この組織の一部にmicropapillary carcinoma成分を認めた。腸間膜リンパ節、大動脈周囲リンパ節、左鎖骨上窩リンパ節転移を認めたが、肝転移や肺転移はなく、大腸癌（AC, type 5, cSE, cN3, cH0, cP0, cM1, cStage 4）と診断し、化学療法を開始した。当初mFOLFOX6+Bevacizumabを施行したが、約6ヶ月目にPDとなり、以後FOLFIRI+Cetuximabなどの化学療法を施行した。化学療法による疾患のコントロールは困難であり、治療開始から約12ヶ月後に死亡、病理解剖を行った。腫瘍の主座は上行結腸で、回盲部周囲は腫瘍浸潤により一塊となり、著明な腹腔内リンパ節腫大と多数の腹膜播種、遠隔転移を認め、転移巣でmicropapillary carcinoma成分が確認された。Micropapillary carcinomaはリンパ管腔様の空隙内に微小乳頭状の癌胞巣を認める腫瘍で、高率にリンパ管侵襲、リンパ節転移を伴うことや、生物学的悪性度が高く、予後不良であることが報告されている。本例では明らかな血行性転移は同定できないにも関わらず、リンパ行性転移が顕著で病勢が強かったことはmicropapillary carcinoma成分を伴っていたことと関連すると思われた。今回、micropapillary carcinoma成分を有する大腸癌は稀であり、若干の文献的考察と合わせて報告する。 |
