抄録 |
【目的】肝胆道系悪性腫瘍による胆管狭窄に合併した肝膿瘍は難治性で予後不良である。抗生剤動注療法が有効であるとの報告もあるが症例の選択、時期等一定の見解はない。今回我々はレトロスペクティブに黄疸を伴う胆道狭窄合併の肝膿瘍症例の予後を検討し極めて予後不良である事を確認、予後改善目的で新規発生肝膿瘍症例の承諾の得られた者に抗生剤動注療法を併用した。それらに関して予後や投与タイミングについて検討した。【方法】1)2008年以前の肝膿瘍全症例について予後を検討。2)新規発生肝膿瘍症例で同意の得られた者に抗生剤肝動注療法を施行。基礎疾患、胆道閉塞の有無別に治療方法と時期、治癒までの期間と予後を検討【結果】1)2001~2008年の肝膿瘍症例のうち胆道狭窄合併症例は全例治癒せず死亡(致死率100%)。胆道狭窄のない悪性腫瘍例は3例中1例死亡(33%)基礎疾患無し症例は全例治癒(0%) 2)新規症例もあわせた解析症例は胆道狭窄合併肝膿瘍17例(肝門部型HCC 5,CCC 6,GB ca 2,PK1,CBD ca 1,転移性肝癌1,unknown 1)、胆道狭窄無の悪性腫瘍7例(HCC 5,PK 1,転移1)基礎疾患無し7例であった。全例抗生剤全身投与施行、閉塞性黄疸合併の4例、RFA後の2例以外はドレナージも施行。承諾の得られた8例で抗生剤動注を施行。胆道狭窄のない悪性腫瘍例及び基礎疾患無しの症例では全例治癒したのに対し、胆道狭窄例では抗生剤動注無しの9例全例死亡、動注療法施行例の内5例で再燃し死亡。治癒までの期間は動注施行例で96.8(40~175)日、死亡までの期間は動注非施行例で54.2(14~124)日。動注施行例で184.5(105~275)日。治癒症例では動注開始までの期間が平均5.5日であったのに対し死亡症例では46.8日と動注開始までの期間が遅れていた。【結論】胆道狭窄合併の肝膿瘍は難治で、抗生剤全身投与とドレナージのみでは治癒が望めず急激に死に至る症例もある。徒に全身投与を続ければ耐性菌を作り治癒困難となる可能性がある。こういった症例では可及的速やかに抗生剤動注療法に踏み切る必要があることが示唆された。 |