セッション情報 一般演題

タイトル 096:

腹腔-静脈シャント術により難治性腹水をコントロール後治療し得た肝細胞癌の一例

演者 城野 智毅(公立八女総合病院 内科)
共同演者 永松 洋明(公立八女総合病院 内科), 平井 真吾(公立八女総合病院 内科), 丸岡 浩人(公立八女総合病院 内科), 徳安 秀紀(公立八女総合病院 内科), 澤田 昌幸(公立八女総合病院 内科), 立石 秀夫(公立八女総合病院 内科), 吉田 博(公立八女総合病院 内科), 佐田 通夫(久留米大学 消化器内科)
抄録 【はじめに】肝細胞癌(HCC)の治療適応は、肝機能がChild-Pugh grade B以上であり、難治性腹水が存在すると治療が困難となる。今回難治性腹水に対して腹腔-静脈シャント術(デンバーシャント)後、TACEを施行し得たHCCの一例を経験したので報告する。【症例】87歳、女性。2004年7月に肝S5に長径22mm大のHCCを認めRFAを施行。2007年10月のCTにてS5のRFA部局所再発と、肝S2に径15mm、12mmを認め、それぞれに対しTACEを施行した。2010年1月、S5に径15mmの再発を認めていたが、腹水貯留もあり治療せず経過観察していた。2011年1月腹水は難治性となり、利尿剤投与、アルブミン製剤投与でもコントロール不良となった。HCCは肝表面で径30mmと増大傾向にあり破裂の危険性も考慮し2011年2月TACEを行った。S3にも径15mmのHCCみられたが、週に1回腹水穿刺が必要な状態にあり無治療とした。腎機能は悪化し、血清クレアチニンは、2011年3月1.25mg/dLと上昇した。腹水は漏出性でありプロトロンビン時間51%、総ビリルビン1.0mg/dL、ほか肝機能は保たれていたため2011年4月デンバーシャントを留置した。一時肺うっ血が認められたが利尿剤にて改善した。その後は問題なく経過し5月に退院となった。2011年7月の造影CTにて、肝S3のHCCは径25mmと増大、S7にも径25mmの再発がみられた。この時点で腹水はコントロールされた状態にあり、肝予備能もChild-Pugh Grade C(score10)からChild-Pugh Grade B(score7)まで改善していた。HCCに対する治療可能と判断し、2011年8月、肝S3、S7に対して選択的TACEを施行した。腹部CTでHCC部にリピオドール集積良好、腹水悪化もなく肝機能も保たれており退院となった。【まとめ】HCC症例において、難治性腹水が存在すると治療が困難となり予後不良となる。難治性腹水に対しデンバーシャント施行により腹水コントロールし、肝予備能も改善したためHCCに対し治療を行うことができた症例を経験した。条件がよければ難治性腹水に対してデンバーシャントは有効な選択肢になりうると考えられた。
索引用語 腹腔-静脈シャント, 難治性腹水