セッション情報 ワークショップ1「炎症性腸疾患の新しい治療戦略」

タイトル WS1-14:

オキナワモズク由来フコイダンの腸管上皮保護作用

演者 知念 寛(琉球大学医学部附属病院 光学医療診療部  )
共同演者 伊良波 淳(琉球大学医学部附属病院 光学医療診療部  ), 与那城 拓巳(うるまバイオ株式会社), 金城 福則(琉球大学医学部附属病院 光学医療診療部  )
抄録 【緒言】 近年、本邦では潰瘍性大腸炎に対し、アザチオプリン、タクロリムス、インフリキシマブ等の薬剤が保険適用となり、血球除去療法も週2回以上の施行が可能となった。しかし副作用や治療コスト等の問題が存在する。また、潰瘍性大腸炎は大腸上皮が傷害される病態であるが、これらの治療法は炎症を抑制するが上皮への保護作用は有していない。沖縄県は、本邦最大のモズクの生産地で、そのオキナワモズク(Cladoshipon okamuranus Tokida)由来のフコイダンは、腸炎モデルマウスにおいて炎症を抑制する効果があることが報告されている(Matsumoto S, et al. Clin Exp Immunol. 2004)。今回我々は、フコイダンの腸管上皮保護作用について検討したので報告する。
【方法と結果】大腸上皮細胞株Caco-2細胞を、0.4μm径のトランスウェル上層で培養し、経上皮電気抵抗( transepithelial electric resistance: TER)が500Ω程度に上昇するのを確認した後、下層に過酸化水素水を添加(0.5mM)し、上層にはフコイダン0.1~2.5mg/mlを添加した。TERは過酸化水素添加で低下するが、フコイダンはTERの低下を濃度依存的に抑制した。また同じ実験系で、FITCでラベルしたデキストランの透過を検討すると、フコイダンはデキストランの透過を抑制した。以上よりフコイダンは大腸上皮への酸化ストレスに対し保護作用を有することが示された。フコイダンの抗酸化作用はOXY吸着テストで確認した。次に、この実験系でタイトジャンクションタンパクであるclaudinの発現を免疫染色とPCRにて検討した。過酸化水素水を添加するとclaudinの発現は低下するが、フコイダンの添加でclaudinの発現低下が抑制された。フコイダンが抗酸化作用を介さずにタイトジャンクションタンパクの発現に関与している可能性について、上記の実験系でTERが350~400Ωの段階でトランスウェル上層にフコイダンを添加してTERの変化を測定した。フコイダンの添加でTERの上昇は促進された。
【結語】フコイダンは、抗酸化作用とタイトジャンクションタンパクの発現亢進作用により、炎症から大腸上皮を保護する可能性が示された。
索引用語 フコイダン, 腸管上皮細胞