セッション情報 | 専修医発表(卒後3-5年迄) |
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タイトル | 専07:術前診断が困難であった肝門部グリソン鞘内神経内分泌腫瘍の一例 |
演者 | 甲斐田 剛圭(熊本大学消化器外科) |
共同演者 | 近本 亮(熊本大学消化器外科), 山尾 宣暢(熊本大学消化器外科), 清住 雄希(熊本大学消化器外科), 新田 英利(熊本大学消化器外科), 今井 克徳(熊本大学消化器外科), 中原 修(熊本大学消化器外科), 生田 義明(熊本大学消化器外科), 土居 浩一(熊本大学消化器外科), 石河 隆敏(熊本大学消化器外科), 高森 啓史(熊本大学消化器外科), 別府 透(熊本大学消化器外科), 馬場 秀夫(熊本大学消化器外科) |
抄録 | 神経内分泌腫瘍(NET)は膵、下垂体、消化管、肺など全身のあらゆる部位に発生する神経内分泌細胞由来の腫瘍で、非機能性NETでは診断に難渋することが多い。今回、肝門部グリソン鞘内に発生したNETの一例を経験したので報告する。症例は68歳、男性。検診で肝門部に直径2cmの腫瘤性病変を認め、増大傾向を示したため当院紹介となった。肝炎ウイルス感染の既往はなく肝障害はAであった。腫瘍は肝門部で左右グリソンの頭側に接して存在しており、境界明瞭で膨張性発育を示した。ダイナミックCT、EOB-MRIでは造影効果が乏しかった。MRI拡散強調画像では強い拡散制限を認めた。腫瘍マーカーは、AFP7.4と軽度上昇していた。高分化型管細胞癌(HCC)などが鑑別にあがり、前方アプローチによる腫瘍切除術を行うこととした。カントリー線に沿って肝実質を切離し、肝門部グリソンの頭側に達した。触診で腫瘍の位置を確認すると、腫瘍はグリソン鞘内に存在しており、肝実質との連続性はなかった。肝門部グリソン鞘を切開し、内部を慎重に剥離するうちに灰白色粥状の腫瘍内容が漏出してきた。迅速病理では高分化型HCCを疑うとの回答であった。異所性HCCの診断で腫瘍をグリソン鞘内から腫瘍被膜とともに遺残なく核出した。術後経過は良好で術後8日目に退院した。永久標本の病理診断では、類円形の核を有した腫瘍細胞が充実性に増殖し、核分裂像は1個/HPF、Synaaptophysin、ChromograninA、CD56、CK19が陽性、MIB-1indexは1%未満で、NET grade 1の診断であった。転移性NETを考慮し、小腸カプセル内視鏡、上腹部MRIで原発巣を検索したが、腫瘤性病変は指摘できず、原発性肝門部グリソン内神経内分泌腫瘍と診断した。これまでグリソン鞘内NETの報告はなく非常に稀な腫瘍と考えられる。診断は、画像検査上、特徴的な所見が乏しく、術後病理診断によるところが大きい。今後、局所再発の有無、原発巣の出現など、厳重な経過観察が必要と考える。 |
索引用語 | 神経内分泌腫瘍, グリソン鞘 |