セッション情報 一般演題

タイトル 029:

びまん性胃粘膜下異所腺に併存した多発早期胃癌に対して腹腔鏡下胃全摘術を施行した1例

演者 持留 直希(九州大学医学研究院院臨床・腫瘍外科)
共同演者 前山 良(九州大学医学研究院院臨床・腫瘍外科), 大内田 研宙(九州大学医学研究院院臨床・腫瘍外科), 上田 純二(九州大学医学研究院院臨床・腫瘍外科), 田宮 貞史(九州大学医学研究院形態機能病理学), 澤村 紀子(九州大学医学研究院病態制御内科学), 伊原 栄吉(九州大学医学研究院病態制御内科学), 中村 和彦(九州大学医学研究院病態制御内科学), 永井 英司(九州大学医学研究院院臨床・腫瘍外科), 田中 雅夫(九州大学医学研究院院臨床・腫瘍外科)
抄録 (はじめに)早期胃癌の場合、口側断端距離を充分確保のうえ、噴門側を温存できる症例は幽門側胃切除の適応となる。今回我々は癌の存在部位からは幽門側胃切除の適応となるが、びまん性異所性胃腺が存在したため腹腔鏡下胃全摘術を選択した症例を経験したため、若干の文献的考察を加え報告する。(症例)症例は64歳男性、胃部不快感を主訴に受診した。上部消化管内視鏡で胃体上部と前庭部にそれぞれ0-IIc病変を認め、生検の結果、胃体上部・前庭部の病変共にGroup V(いずれも高~低分化型腺癌)であった。超音波内視鏡検査では、胃全体にびまん性に粘膜下層に数mm大の嚢胞状変化を認め、胃粘膜下異所腺と考えた。また病変の深達度はそれぞれSM,Mと考えられた。胃体上部の病変からE-C junctionまでの距離は6cmほどあり、幽門側胃切除術も可能と思われたが、びまん性の胃粘膜下異所線の32%に多発胃癌を併存するという報告があること、また異所腺を有する場合に術前診断困難な微小癌病変が存在する可能性があること、以上より残胃に癌が遺残する可能性と残胃癌発生の可能性を考慮し、腹腔鏡下胃全摘術(D1+郭清、R-Y再建)を施行した。病理学的検索では粘膜下のびまん性異所性胃腺、体上部と前庭部の早期胃癌と小さなGISTを認め、びまん性胃粘膜下異所腺に併存した多発早期胃癌とGISTと診断した。患者は合併症なく経過良好で術後10日目に退院した。(まとめ)びまん性胃粘膜下異所腺に合併した多発早期胃癌の1例を経験した。胃粘膜下異所腺は比較的まれな疾患であるが、術前診断が困難な微小病変が存在する可能性や残胃の胃粘膜下異所腺から発生した胃癌の報告例があることなどを考慮した術前病変の検索、治療法の選択、残胃が存在する場合は術後の厳重な経過観察が必要であると考えられた。
索引用語 異所性胃腺, 腹腔鏡下胃全摘術