セッション情報 一般演題

タイトル 162:

5年間の経過観察で破裂を来した膵管内乳頭粘液性腫瘍の一例

演者 垣内 誠也(戸畑共立病院)
共同演者 松嶋 祐(福岡大学筑紫病院), 酒見 亮介(戸畑共立病院), 石原 裕士(戸畑共立病院), 森光 洋介(戸畑共立病院), 内山 大治(戸畑共立病院), 宗 祐人(戸畑共立病院), 下河辺 正行(戸畑共立病院), 久保 保彦(戸畑共立病院), 佐田 通夫(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門)
抄録 【症例】84歳・男性【主訴】上腹部痛【現病歴】近医にて79歳時より膵腫瘍を経過観察されていた。2009年11月、上腹部痛を主訴に当院を受診した。血液生化学検査にてWBC18170/μl・CRP23.3mg/dlと高度の炎症反応の上昇と、Amy577U/lと高アミラーゼ血症を認めた。腹部造影CTにて、膵周囲の液体貯留と膵尾部嚢胞性腫瘍の破裂を認めた。以上より、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)破裂による汎発性腹膜炎の診断で、精査加療目的にて当科入院となった。【経過】以前より手術は本人が拒否しており、全身状態からも手術適応はなく、絶食・補液・抗菌薬投与・蛋白分解酵素阻害薬の投与で保存的加療を開始した。第16病日に腹水穿刺を施行したところ、腹水中には高度の膵酵素漏出(Amy 46834U/l・Lip 53927CC-U)を認めた。第35病日に膵尾部嚢胞穿刺を施行したところ、淡黄色~淡血性の排液と高度の膵酵素(Amy 152050 U/l・Lip 94650 CC-U)を認めた。嚢胞内持続吸引ドレナージ・腹腔内洗浄を継続し、膵尾部嚢胞破裂部は限局化傾向にあった。しかし第41病日にARDSを合併し、第55病日には播種性血管内凝固症候群を発症した。その後、多臓器不全を来たし、第85病日に死亡した。【考察】病理解剖では、膵尾部に破裂した嚢胞がみられ、膵周囲・腸間膜・腹膜に急性膵炎様の壊死性脂肪織炎を認めた。嚢胞内腔には粘液産生上皮が高乳頭状に増殖し、病変は主膵管から連続しており、混合型膵管内乳頭粘液性腫瘍(少なくとも部分的には膵管内乳頭粘液性腺癌)であった。文献を検索した限りでは、発見から自然経過を経て破裂・死亡に至ったIPMNは稀であり、興味深い症例と思われたため、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 IPMN, IPMC