抄録 |
【症例】69歳 女性。【既往歴・生活歴】狭心症で当院循環器内科受診。家族歴・生活歴には特記事項なし。【現病歴】2009年6月8日より左下腹部痛、腹部膨満感を自覚した。症状改善ないため翌6月9日当院受診した。【身体所見・検査所見】来院時の身体所見は、左下腹部に軽度圧痛を認めるのみであった。血液検査上も軽度炎症反応の上昇を認めるのみであった。圧痛の原因検索として腹部-骨盤CT撮影したところ、下行結腸下部外側に40mm前後の範囲で脂肪濃度上昇と索状の敷石状構造を認めた。周囲には憩室や腸管壁肥厚、浮腫性変化は認めなかった。【経過】CT所見より腹膜垂炎と診断した。画像所見に反して血液検査結果・身体所見に大きな異常を認めたかったこともあり、経口抗菌剤にて治療を行った。1週間後の血液検査ではCRPは正常化しており、左下腹部痛も消失していた。その後も経時的に経過観察を行ったが、4ヶ月後にはCT所見の正常化が確認できた。【考察・結語】腹膜垂は直腸以外の全結腸に存在するが、炎症を起こして臨床的に問題となることは稀である。さらに欧米に比して本邦での報告は比較的少なく、憩室炎や虫垂炎との鑑別が困難な疾患である。治療法に関しては、報告例を見る限り診断も兼ねて手術となった事例が大多数を占める。しかしながら本症に特徴的所見が明確になったこともあり、近年正確な画像診断が可能になってきた。また、保存的加療で軽快する場合が多いことも、最近知られるようになってきた。我々が経験した症例も、CTにて正確な画像診断が可能であったため、不要な検査・手術を行うこともなく保存的治療で軽快することができた。若干の文献的考察を踏まえ、我々の経験した症例を報告する。 |