セッション情報 |
専修医発表(卒後3-5年迄)
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タイトル |
専03:肝内側区域の肝細胞癌破裂に対し待機的に切除しえた一例
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演者 |
佐藤 奈緒(新小倉病院 内科DELIMITER健和会大手町病院 総合診療科) |
共同演者 |
山下 信行(新小倉病院 肝臓病センター), 谷本 博徳(新小倉病院 肝臓病センター), 相島 慎一(九州大学大学院医学研究院 形態機能病理学), 西浦 三郎(新小倉病院 肝臓病センター), 野村 秀幸(新小倉病院 肝臓病センター) |
抄録 |
【症例】60歳代、男性 【主訴】腹痛、食思不振 【病歴】20数年前にB型肝炎を指摘され、数年の通院加療後、自己判断にて治療を中断した既往がある。深夜、突然の強い心窩部痛があった。痛みは徐々に改善したが、食思不振が出現したため、発症6日後に当院内科を受診した。来院時、体温36.6度、血圧108/60mmHg、脈拍88/分、呼吸数16/分、身体所見にて心窩部に手拳大の弾性硬の腫瘤を触知した。血液検査ではCRPの上昇を認める以外は特記所見なく、AFPは陰性で、PIVKA-IIは術前に陰性化した。腹部画像検査で肝S4下面に径6cm大の腫瘤性病変と周囲に血液様の液体貯留を認め、肝腫瘍の診断にて同日緊急入院し、絶食輸液管理とした。腫瘤は肝細胞癌の破裂である可能性が最も高いと考えられたが、入院後も心窩部痛はみられず、バイタルサインは安定していた。入院8日目に手術の予定としたが、待機中に眼科感染症に罹患し、入院22日目に開腹手術を施行した。肝S4の腫瘍は術中、肉眼的にも肝細胞癌と判断されたため、肝S4切除とした。病理組織で中分化型肝細胞癌の確定診断を得た。現在、外来で経過観察中である。 【考察】全国原発性肝癌追跡調査報告によると、肝癌の破裂は全体の約3%に認め、破裂を契機に大量出血による血圧低下や、それに伴う肝不全をきたし死の転帰をたどる場合が多い。治療はほとんどの症例で緊急の肝動脈塞栓術や外科手術を要すが、予後は不良である。本症例は肝細胞癌破裂後の経過が緩徐で、血圧低下も来さず、待機的に外科手術が可能であった。このような症例は比較的まれと考えられ、文献的考察を含め報告する。 |
索引用語 |
肝細胞癌破裂, 肝切除 |