セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専06:

骨盤腔内に発生した神経節神経腫の1例

演者 大内 繭子(熊本大学 消化器外科)
共同演者 坂本 快郎(熊本大学 消化器外科), 有馬 浩太(熊本大学 消化器外科), 中村 健一(熊本大学 消化器外科), 井田 智(熊本大学 消化器外科), 石本 崇胤(熊本大学 消化器外科), 岩槻 政晃(熊本大学 消化器外科), 長井 洋平(熊本大学 消化器外科), 岩上 志朗(熊本大学 消化器外科), 馬場 祥史(熊本大学 消化器外科), 宮本 裕士(熊本大学 消化器外科), 渡邊 雅之(熊本大学 消化器外科), 馬場 秀夫(熊本大学 消化器外科)
抄録 [はじめに] 今回、男性の骨盤内に発生し、摘出標本の病理組織学診断にて神経節神経腫と診断された後腹膜腫瘍の1例を経験したので報告する。[症例]43歳、男性。前医で検診のために施行した腹部エコーで直腸左側に腫瘤を認めたため、CTを施行したところ75x55mm大の腫瘤を認め、精査・加療目的に当科紹介となった。注腸造影では直腸の圧排像を認めた。MRIでは直腸左側に境界平滑明瞭な腫瘤を認め、内部に血管を思わせるflow voidと早期濃染像を認めた。EUSでは直腸との連続はなかった。鑑別診断として腸間膜由来のGIST、奇形腫、平滑筋腫、リンパ腫などが考えられたが、悪性腫瘍も否定できないことから摘出術を行うこととした。臍上部から恥骨上までの下腹部正中切開にて手術を開始。直腸左背側に弾性硬の腫瘤を触知し、腹膜翻転部にて腹膜を切開したところ、腫瘤上部をわずかに認めることができた。腫瘍は左下腹神経と一部連続しており、左下腹神経は切離した。尾側前面で精嚢温存を確認、背側で仙骨前面とは非常に密着しており、剥離に難渋したが腫瘍を摘出した。腫瘍内には周囲から血管流入を認めた。病理組織学診断は神経節神経腫であった。 [考察] 神経節神経腫は成熟神経細胞および神経線維から発生する良性腫瘍で、神経節細胞が集簇的あるいは単独にみられ、その間に豊富な神経線維、Schwann細胞などが増生し、神経芽細胞を含まないものである。神経節神経腫は、全後腹膜腫瘍の中で0.7%と比較的まれな疾患であり、後発部位は縦隔(39%)、腹部後腹膜(31%)、副腎(22%)であるが、骨盤内での発生は約6%である。良性後腹膜腫瘍の予後は良好であるが、神経節神経腫においては悪性転化した報告例もあり、手術による病巣の完全な摘除が診断的意味も含めて治療の原則と考えられる。
索引用語 骨盤腔, 神経節神経腫