セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研18:

急性胆嚢炎の胆嚢穿破から広範な肝被膜下膿瘍をきたした1例

演者 大神 玲奈(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター)
共同演者 河邉 顕(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 吉本 剛志(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 高岡 雄大(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 中村 吏(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 山崎 章裕(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 国府島 庸之(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 森 大介(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 柿ヶ尾 佳奈(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 岡本 梨沙(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 福田 慎一郎(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 原口 和大(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 水谷 孝弘(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 福嶋 伸良(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 福泉 公仁隆(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 原田 直彦(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター), 中牟田 誠(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科・臨床研究センター)
抄録 急性胆嚢炎の重症例では胆嚢壁や胆嚢周囲に膿瘍を合併することはあるが、肝側に穿破し肝被膜下膿瘍を併発することは稀である。今回、我々は進行膵癌に対する化学療法中に発症した急性胆嚢炎の胆嚢穿破から広範な肝被膜下膿瘍をきたした一例を経験したので報告する。症例は70歳男性。多発性肝転移を伴う手術不能進行膵癌と診断し、当科外来にて化学療法継続中であった。2011年7月に膵癌による悪性下部胆道狭窄に対して、ERCP下でcovered metallic stentを留置した。留置後早期には特に合併症を認めなかったが、留置2週間後に発熱、意識障害、心窩部痛を主訴に当院救急外来を受診した。血液・画像検査所見から急性胆嚢炎からの敗血症性ショックと診断した。絶食、輸液、抗生剤に加え、昇圧剤、大量蛋白分解酵素阻害剤、免疫グロブリン製剤を投与した。治療開始後、第5病日でショック離脱した。第6病日に施行した腹部造影CTでは、既知の膵癌による癌性腹膜炎に加え、肝右葉全面に被包化された膿瘍と胆嚢壁欠損像を認め、胆嚢穿破による肝被膜下膿瘍と診断した。第7病日にエコーガイド下に肝被膜下膿瘍穿刺を施行し、茶褐色膿汁を1300ml吸引した。その後、全身状態は改善傾向にあったが、炎症反応は高値を持続し、抗生剤を変更するも反応に乏しかった。第14病日に施行した造影CTでは肝被膜下膿瘍は再度増大を認めたため、持続的ドレナージが必要と判断し、第15病日にエコーガイド下に経皮的肝被膜下膿瘍内にドレーンを留置した。混濁した黄褐色膿汁を吸引した。留置初日には約3000mlの混濁した黄褐色膿汁を排膿した。留置5日目までに計4000ml以上の排膿を認めた。その後排液量は徐々に減少し、それに伴い解熱と炎症反応低下を認めた。急性胆嚢炎の重症例では胆嚢穿破から膿瘍形成をきたし、治療に難渋することがしばしばある。特に抗がん剤や免疫抑制剤投与中には、重症化、予後不良となる可能性が高いため、積極的に観血的治療も考慮するべきである。
索引用語 肝膿瘍, 急性胆嚢炎