セッション情報 シンポジウム2「慢性肝炎治療の現況」

タイトル S2-05:

インスリン抵抗性を示すC型慢性肝炎に対する食事・運動療法の有用性の検討

演者 岩根 紳治(佐賀大学付属病院内科)
共同演者 河口 康典(佐賀大学付属病院内科), 岡田 倫明(佐賀大学付属病院内科), 磯田 広史(佐賀大学付属病院内科), 中下 俊哉(佐賀大学付属病院内科), 高橋 宏和(佐賀大学付属病院内科), 江口 有一郎(佐賀大学付属病院総合診療部), 尾崎 岩太(佐賀大学付属病院保健管理センター), 水田 敏彦(佐賀大学付属病院内科)
抄録 【目的】C型慢性肝炎に対するインターフェロン(IFN)治療において、インスリン抵抗性(IR)は治療抵抗性要因のひとつであり、唯一治療開始前に介入しうる因子である。今回、治療前にIRを評価し、IRを有する群にIFN治療前に減量介入を行う前向き試験を行った。【方法】2007年7月~2009年5月に同意が得られた1型、高ウイルスのC型慢性肝炎62例(男性29例、平均年齢56歳、24-71歳)。HOMA-IRを測定し、2以上のIR群(26例、男性14例),2未満のnon-IR群(36例、男性15例)の2群に分類し、Non-IR群に対しては通常のPEG-IFNα-2a+ribavirin療法を導入した。IR群に対してはまず3か月以上の厳密な食事・運動療法の減量プログラムを行い、その後に通常のPEG-IFNα-2b+ribavirin療法を開始した。IR群においては介入前後の身体計測、生化学検査、IR評価および内臓脂肪面積を測定し、両群の陰性化(<1.2 logIU/ml)の時期とSVRについて検討した。【成績】全体のHCVRNA陰性化は、4週目11%(7/61)、8週目64%(39/61)、12週目67%(41/61)であった。Non-IR群では4週目19%(7/36)、8週目81%(29/36)、12週目81%(29/36)の陰性化率であった。IR群に対する食事・運動療法の介入期間は平均201日であり、体重70.4→66.7Kg、BMI25.7→24.4、HOMA-IR3.58→2.39、内臓脂肪面積116.2→93.0cm2、総コレステロール,中性脂肪も有意に低下した。肝機能、ウイルス量は不変であった。IR群のHCVRNA陰性化率は4週目0%(0 /25)、8週目40%(10/25)、12週目48%(12/25)であった。またSVR率は全体で68%(39/57)で、Non-IR群では88%(29/33)、IR群では42%(10/24)であった。【考察】我々のhistorical dataでは、HOMA-IR2以上の症例で12週目陰性化率は25%でSVR率は21%であり、今回の介入プログラムにより治療効果が著明に改善したと考えられる。Non-IR例では通常のPEG-IFN+ribavirin治療で良好な抗ウイルス効果が得られた。【結語】治療前にIRを評価し、IRを有する症例に適切に介入することにより、難治例であっても治癒率を高めることができる可能性が示された。
索引用語 C型慢性肝炎, インターフェロン