抄録 |
背景:結腸憩室症は、出血・穿孔などで外科治療を要することが少なくない。穿孔を伴う場合など、病巣の完全な切除とドレナージのため開腹手術を要する場合多いが、術前画像診断で適応を十分に検討すれば腹腔鏡手術が可能である。今回我々は、難治性の憩室症2例に対し腹腔鏡手術を施行した。症例:症例1は52歳男性で、4か月前より大量の下血を間歇的に認めたが放置しており、貧血の進行によるふらつきを主訴に当院を受診した。大腸内視鏡にて盲腸を中心に多発性の憩室を認め、粘膜発赤と血餅の付着を伴っていた。辺縁動脈の塞栓術なども検討したが、受診時activeな出血を認めないことから責任病巣の同定が不可能と判断し、腹腔鏡下右結腸切除術を施行した。症例2は30歳男性で、右下腹部の激痛と高熱で受診した。CTでは盲腸ー上行結腸にかけてび慢性の壁肥厚と周囲の液体貯留を認めた。ガストログラフィン造影では右側結腸に無数の母指頭大ー鶏卵大の憩室を認めた。10日間の絶食期間を置き、腹腔鏡下右結腸切除術を施行した。2例とも後腹膜への病巣の進展が術前に指摘されず、腹腔鏡手術が可能と判断した。手術所見では、腸管近傍の腸間膜は板状に肥厚していたが、回結腸動静脈内側からの鈍的操作を先行させて後腹膜ー腸管外側の壁側腹膜までいたり、安全に手術が施行できた。また大網の広範な癒着を認めたが、内側剥離操作の視野は良好に保つことができた。結論:憩室症では、腸管近傍の腸間膜の炎症性肥厚があり、また腸間膜側に突出した憩室も認められることから、早期癌に対する手術に準じた、内側アプローチが安全であると示唆された。当院での腹腔鏡下右結腸切除術における、ポート設定・剥離手技のポイントを提示するとともに、憩室性疾患に対する腹腔鏡手術の適応に関して議論したい。 |