セッション情報 ワークショップ1「炎症性腸疾患の新しい治療戦略」

タイトル WS1-06:

難治性潰瘍性大腸炎患者に対するinfliximabの治療効果と安全性の検討

演者 浅野 光一(九州大学病院光学医療診療部)
共同演者 梅野 淳嗣(九州大学病態機能内科学), 松本 主之(九州大学病態機能内科学)
抄録 【目的】2010年6月にinfliximab(IFX)が潰瘍大腸炎(UC)に対する治療として保険収載された。そこで自験UCに対するIFXの短期・中期治療効果と安全性について検討した。【方法】当科でIFXによる寛解導入・維持療法を施行した活動期UC患者13例を対象とし、前治療、IFXの寛解導入率、中期経過、および有害事象を検討した。UCの臨床的活動性はSeoらのulcerative colitis activity index (UCAI)で評価し、150以下を寛解とした。内視鏡的重症度はSchroederスコアを用い、Grade 0を寛解とした。【結果】IFX導入前の治療は、経口タクロリムス8例、プレドニゾロン(PSL)全身投与4例、顆粒球・単球除去療法(GCAP)1例であった。IFX投与前のUCAIは218.8±26.9(平均±標準偏差)であったが、寛解導入療法開始2週後、および8週後にはそれぞれ141.7±27.2、110.0±17.7と有意に低下し、緩解導入率は2週後で61.5%、8週後で92.3%であった。26週以上経過観察できた寛解導入例8例のうち、6例で寛解維持が可能であった。IFX無効例(非寛解導入1例と寛解後再燃2例)と寛解維持例の間で、治療開始時のUCAI値、CRP値、内視鏡的重症度に明らかな違いは認めなかった。7例でIFX開始前と開始後に内視鏡検査を施行し、4例は内視鏡所見が改善、2例は不変、1例は増悪し、内視鏡的寛解が得られたのは1例のみであった。内視鏡的重症度が軽減した4例では臨床的寛解が得られ、維持治療下に再発はなかった。一方、内視鏡所見が不変の2例でも臨床的寛解が得られた。治療開始時に9例にステロイド(PSL)が投与されていたが、5例で中止、2例で減量可能となった。しかし、他の2例では無効、ないし再発のため増量が必要となった。有害事象として、投与時反応を1例、肺炎1例、単純ヘルペス1例、胸膜炎1例、発熱1例、発疹を1例に認めたが、副作用のため投与中止となった症例はなかった。なお、IFX投与開始3カ月後に子宮体癌を1例に認めたが関連は不明である。【結語】IFXは難治性UCに対して良好な緩解導入効果を有していた。一方、今回の検討ではIFXの長期経過は不明であり今後の検討課題である。
索引用語 潰瘍性大腸炎, infliximab